一時期はネガティブな反応が目立った晴海フラッグは、いかにして「超人気物件」となったのか。不動産ジャーナリストの吉松こころ氏が実態をレポートする。
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晴海フラッグは、東京都中央区晴海5丁目の埋立地に建設された総戸数5600戸を超えるマンション群である。東京ドーム約4個分の敷地に、分譲19棟、賃貸4棟、その他商業施設の計24棟が建っている。東京湾やレインボーブリッジを一望でき、銀座までは2.5キロメートルという立地で、「東京都心に残された最後の一等地」と言われた。五輪期間中は約1万1000人の選手が滞在し、その後は分譲・賃貸されるため、東京都は「都民に残す五輪レガシー(遺産)」と謳っていた。
当初の評判は散々だった
しかしながら、販売が始まった2020年頃の評判は散々だった。
「あんな陸の孤島に誰が住むんだよ」「すぐ隣がゴミの焼却施設でしょう。最悪の場所ですよ」「オリンピック延期で入居も1年延期。販売時期にコロナまで来ちゃって呪われているとしか思えないよ」「土地の値引きで近隣住民と訴訟中でしょう。イメージ悪過ぎ」。著名な不動産評論家さえ私にそう言った。
この土地の値引きの詳細は、2019年5月に『週刊文春』が報じている(清武英利、小野悠史、週刊文春取材班)。記事によれば、選手村の地価は、1平方メートルあたり9万6800円と鑑定され、周辺相場の10分の1から20分の1という破格の安値で開発事業者に渡った。開発事業者とは、三井不動産レジデンシャルを代表に、不動産大手が名を連ねる11社の企業連合だ。2017年に社会問題となった森友学園への国有地払い下げは8億円の値引きで連日トップニュースだったが、選手村に至っては、1500億円という耳を疑うようなディスカウントが行われたことになる。

