北海道ニセコ町にまつわる「バブル」のような景気の良い噂は、どこまで本当なのか? これまでに現地を11回取材した不動産ジャーナリストの吉松こころ氏が実態をレポートする。

◆◆◆

国際的な競争力を持った“日本の田舎”

「ニセコで一番高いホテルは1泊600万円、しかも予約できるのは7泊以上する人から」「ランチ2時間、200万円」「コンドミニアムは1戸20億円が普通」「ローカルコンビニ、セイコーマートでは十数万円のドンペリが飛ぶように売れる」「世界中の富裕層がプライベートジェットでやってくる」「テキーラ1杯3000円のかまくらに、ひと冬で3万人のインバウンドが来た」

 こうした話は、全部本当だと思う。地元に数日間滞在したり、地元に住んでいる人と会話をしたりすると、似たような話を当たり前に耳にするからだ。

ADVERTISEMENT

「蝦夷富士」と呼ばれる羊蹄山は、“ニセコ観光圏”を構成する3町(倶知安町、蘭越町、ニセコ町)からよく見える(著者撮影)

 私は、2022年から11回、ニセコを訪れた。使ったお金は、ざっと250万円くらいだ。

 東京からの往復航空券、現地での宿泊・飲食費、レンタカー代などを含む。贅沢はしていない。宿泊費を抑えるために、4畳ひと間の民宿や男女風呂・トイレ共同のペンションにも泊まった。レンタカーは一番安い軽自動車だったが、3日間借りたら、ガソリン代込みで3万円を超えた。やれやれ、億単位の話が普通に飛び交うニセコにあっては随分と安い話をしてしまった。

吉松こころ氏

 2022年8月に初めて訪れた時、今1泊500万円の部屋は300万円程度だった。毎年訪れるたびに、その価格は、400万、500万と値上がりしていった。3年前に来た時は、更地や山林だった場所が造成され、道ができ、建設看板が立っていた。次に来た時には、高級ホテルやヴィラ、別荘群に変わっていた。この動きは今も進行中だ。これだけ高い値段をつけても、これだけ次々と新しい宿泊施設が建っても果てしなく、世界中から人を呼び込める競争力を持った日本の田舎が、ニセコなのだ。