「先生、変なものがあるんです……」
学校裏の山林から見つかったのは、ある男性の変死体だった……。男性の肩にはなぜ傷があったのか? 男性の家族を捜査していくうちに明らかになった驚きの「犯人」と「犯行理由」とは? 平成29年に近畿地方で起きた事件の発端をお届けする。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の1回目/後編を読む)
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山林で見つかった「男性の変死体」
「先生、変なものがあるんです……」
その事件は地元の中学校がボランティアで山林を清掃活動しているときに発覚した。うっそうとした茂みの中に青色のビニールシートの塊が放置されている。
教諭らが確認したところ、端から人の足首のようなものが見えたので、直ちに110番通報した。駆け付けた警察官により、その中身が右肩を鋭利な刃物で刺された男性の変死体であることが判明した。警察は殺人及び死体遺棄事件と見て捜査を開始した。
地元の歯科医院への照会で、被害者の身元が判明した。隣町に住む大工の樫本哲也さん(当時50)の治療痕と一致したからだ。
哲也さんは娘夫婦と住んでおり、1歳になったばかりの孫を溺愛していることで近所に知られていた。
「父は突然、置き手紙を残して出て行ったんです」
娘の綾香(同23)は父親がいなくなった状況を次のように説明した。
「1カ月前のことでした。『皆に気付かれないようにしてたけど、借金の連帯保証人になっていた。お前たちに迷惑は掛けられないから、知らないところへ行ってボチボチ返す』って。同じような内容のメールも来て、〈もうじきこの携帯も使えなくなるから。探さないでくれ〉ってことでした」
綾香はそのメールを見せながら、父親の失踪時の様子について説明した。
「失踪届を出すことは考えなかったのですか?」
