「母とも相談したんですけど、『またあの人は性懲りもなく……』って」

 綾香の両親は綾香が14歳のときに離婚した。その原因は哲也さんが結婚前から借金があることを妻に隠しており、サラ金や親戚から借金を繰り返し、最終的には妻に黙って自宅を抵当に入れていたことだった。警察は元妻のところにも事情聴取に行った。

写真はイメージ ©getty

「離婚後は付き合いもなくなっていたんですが、娘の結婚を機に付き合いが復活しました。最近は週1回は“定例会”と称して食事をするような関係でした。離婚の原因が借金だったのは本当です。

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 その後、自己破産して一人で住んでいたんですが、娘夫婦が一戸建ての家で子どもを育てたいということで、家のローンや生活費を半分ずつ持つという約束で同居を始めたんです。事件の4カ月前のことでした。元夫の仕事はうまくいっているようでしたし、経済的な助けになればいいなァと思いましたから」

 元妻のところにも、哲也さんから〈何度も連絡をもらっていたようだけどごめん〉というメールが届いていた。借金が原因で姿をくらますという内容も同じだった。

夫婦の車から「父親の血痕」を発見

 事件後、綾香は母親が住む“実家”に身を寄せた。死んだ父親も暮らしていた家に住んでいたくなかったし、何より妊娠7カ月の身重だったからだ。綾香は父親の通夜の席で引きつけを起こし、「お母さん、ごめん……」とつぶやき、救急車で病院に運ばれた。母親は、それほど父親の死がショックを与えたのだろうと解釈していた。

 ところが1カ月後、綾香は夫の史郎(同31)とともに殺人と死体遺棄容疑で逮捕されたのだ。母親はおろか、親族全員が仰天した。

「こ、これはどういうことなの……?」

 2人は犯行を否認していたが、夫婦が使用している車から父親の血痕が見つかったことを追及されて容疑を認めた。だが、綾香だけは「殺害は夫の単独犯行です。私は殺していません」と否認した。

 しかし、完オチした史郎の供述によって、事件の全貌が明らかになった。

次の記事に続く 《懲役は…》「お腹の子が死ねばよかったのに」犯人夫婦の子どもは里子に、ほかの家族とは絶縁するハメに…“2人目の孫”の誕生を受け入れない父親を殺害した「ある夫婦のその後」(平成29年)