陶芸の技術を磨くために、6歳年上の師匠のもとについた31歳の女性。2人はともにパートナーがいる身ながら、男女の仲になってしまう。この許されざる恋が行き着いた“驚きの結末”とは……。2021年(令和3年)に起きた事件をお届け。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の1回目/後編を読む)
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陶芸家の師匠と弟子が失楽園
小倉千里(当時31)は大学の陶芸コースを卒業し、遠く離れた製陶所に勤めた。
その近くの別の工房に同じ大学を出た1学年上の男性の先輩がいて、2人は連絡を取り合うようになり、やがて交際に発展。同棲期間を経て、千里が26歳のときに結婚した。
2人は地元に帰り、最初は千里の実家で一緒に暮らしていたが、実家の敷地内に2人の陶芸の工房を作って、親とは別暮らしを始めた。
千里はまだ自分の陶芸技術が未熟であることを気にしていて、市伝統産業技術研究所が開く陶磁器応用コースに2年間通うことにした。
そこで講師をしていたのがのちに愛人となる熊野明さん(同37)である。
熊野さんは100年以上の歴史がある窯元の次男として生まれ、技術専門校を卒業後、家業に従事しながら、市伝統産業技術研究所で研究し、技術を磨いていた。
熊野さんにも妻子がいて、ちょうど千里と出会った頃に長女を授かったばかりだった。子煩悩だったし、夫婦仲も決して悪くなかった。ただ、長女が生まれたのを契機に妻とはセックスレスになっていた。
一方、千里も実家へ移ったのを境に夫とはセックスレスになっていた。夫がセックスに誘っても、「今は陶芸を頑張りたい。子どもができたら困る」と言って拒んでいた。
それもそのはず。千里は尊敬の念から熊野さんに恋心を抱くようになり、熊野さんとの心の距離が近付き、半年後には肉体関係を持ってしまったのである。
その内容も濃厚なもので、ピルを飲んでのSMプレイ、コスプレを使ったイメージプレイなど、熊野さんが望むことには何でも応えた。
応用コースが終わることになっても、「熊野先生の技術は素晴らしい。弟子入りして勉強する」と言って、熊野さんの工房でアルバイト従業員として働くことになった。
千里は熊野さんの作品をインスタグラムに掲載し、販路拡大に協力するなど、その熱心で生真面目な仕事ぶりは熊野さんの妻にも認められていた。
熊野さんが妻とセックスレスになっていたのは、寝室の暖房器具が壊れてしまい、妻と長女がリビングで寝るようになったことが大きいが、妻が「2人目の予定は?」と尋ねても、「仕事が忙しい」と返され、きっと性欲自体が落ちているのだろうと思われていた。
妻は、千里との関係は陶芸の師匠と弟子と信じ切っていて、日頃の彼女の態度からも、不倫関係にあるとは夢にも思っていなかった。
