さらに深刻なのは本人の意識だ。「順調にいい会社で来た方ほど、どっちが上か下かで言うと、今までいた会社の方が上だみたいな目線になる」。この上から目線を受け入れる側は敏感に察知し、面接で話が進まないか、入社後に問題が表面化して短期退職につながるケースが多いという。
転職を意識すべき3つの年齢——37歳、42歳、47歳
黒田氏は転職を意識すべき年齢として37歳、42歳、47歳の3つを挙げた。これらは40歳、45歳、50歳という節目の3年前にあたる。「キャリアを適切に意思決定して判断して選択するまでに準備期間が3年は必要」だからだ。
37歳の場合、本人は「気持ちは32歳」だが、採用側は「もう40歳前の人」「10年後に50歳になる予備軍」として見る。このギャップが恐ろしい結果を生むと黒田氏は警告する。現場でまだまだやりたいと思う本人と、マネジメントや戦略を求める採用側との間で会話がすり合わないのだ。
42歳になると「50まであと5年」で、完全にプレイングではなく経営者候補として、戦略レベルでの価値提供が強く求められる。47歳は「最後の中途採用の最終ライン」で、50歳を超えると定年までのカウントダウンが始まるため、よほど特殊なスキルがない限り採用は困難になる。
転職市場で価値の高い人材の条件
では、転職市場で価値が高いとされるミドル世代の特徴は何か。黒田氏は2つのポイントを挙げた。
第一に「定量的に自分の生み出せる価値を説明できるかどうか」。過去の職務経歴を語るだけでなく、「自分を雇ってくれたらこれだけの成果を生み出せる」ことを、バックボーン含めて説明できる能力が必要だ。
第二に「組織として成果を出せるか」。1人だと1しかできないことを10人の力で10倍にするレバレッジを生み出す力、つまり人を巻き込む力や求心力、マネジメント力が求められる。
「多くの方は職務経歴を語って終わってしまう。採用担当からすると、よその会社での成功体験の話だけを聞かされても、うちに入ったら何をしてくれるか知りたいのに」と黒田氏は指摘する。過去の経験を抽象化し、再現性を持って新しい会社でどんな価値を生み出せるかを語れることが重要なのだ。
