順調にキャリアを重ねている最中、突然親に介護が必要になったら、あなたならどうするだろうか。
現在「介護作家・ブロガー」として活躍する工藤広伸さん(53)は、就職氷河期の中で新卒入社した会社に納得がいかず、転職してコンサル会社に入った。そこで出会った妻と結婚し順風満帆な人生を歩んでいたが、寝耳に水の知らせが入る。父が脳梗塞で倒れ、半身麻痺になったというのだ……。工藤さんがした選択とは?(全3回の2回目/続きを読む)
バブル崩壊後の景気低迷期、1990年代半ばから2000年代初頭に就職活動を行った世代は「就職氷河期世代」と呼ばれる。該当するのは、主に1970年代前半から1980年代前半の約10年間に生まれた人々だ。この連載では、社会の犠牲になったと言っても過言ではない彼ら彼女らがどう荒波を乗り越えてきたのかにスポットを当て、「令和」を生きる私たちがいまをサバイブするヒントを探っていく。
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「Congratulations」
2度目の転職でマネジャーになっていた工藤さんは、一度東京に戻ると、すぐに離職の意向を会社の上司に伝えた。
「妹から『父が倒れた』という知らせを受けた後、病院で父の姿を見た時は内心『あー、終わった……』と絶望しました。だって、その時は地域包括支援センターも、介護保険制度も知りませんでしたから、半ばパニック状態で介護離職を決めてしまいました。まだ34歳だった僕は、『父を介護するために辞める』とは恥ずかしくて言えなくて、『やりたいことがあるので辞めたい』と会社に嘘をつきました」
有給休暇を消化し、最後の出社日、工藤さんが仕事をしていたマネジャーブースに行くと、花が飾られていた。その飾られた花の中には、「Congratulations 工藤さん、おめでとう!」と書かれた札があった。
