旧統一教会の韓鶴子総裁が、韓国の尹錫悦前大統領の妻らへ金品を不正供与した疑いで、韓国の特別検察官に逮捕された。

 

韓鶴子は、教祖の文鮮明の2番目の妻。文鮮明は、少なくとも17人の子をもうけており、このうち14人の母が韓鶴子だ。サムエル・パク氏(以下、サム氏)は文鮮明の隠し子の一人で、教団の矛盾を告発している。

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サムスン創始者に次ぐ富豪の一族

 漢江のほとりで金色に輝く地上60階建ての「63ビル」は、ソウルのランドマークのひとつだ。サム氏の祖父は、このビルを建てた大韓生命のオーナーだった。当時、大韓生命は国内2番目の保険会社で、祖父はサムスングループの創始者に次ぐ国内2番目の富豪だったという。

 統一教会に入信した祖母は、創設間もない教団を財政面で支えた。

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「1973年に亡くなるまで、祖母は膨大な金額を寄付し続けました。総額は数百万ドルに達します。私の母は、祖母によって統一教会の教えに導かれました。父・文鮮明牧師との関わりは1953年、母が17歳のときに始まりました。父が強制的に、母の処女を奪ったのです。彼は母に向かって『真の母』になるよう運命付けられているから性的関係をもったのだ、と言い含めたそうです」

 文教祖には、判明しているだけでサム氏を含めて17人の子がいる。母親は4人だが、他にも多数の女性がいた。

旧統一教会の教祖・文鮮明(左)と、今年9月に逮捕された妻の韓鶴子 ©EPA=時事

 最初の夫人は崔先吉(チェソンギル)。文鮮明と同じ北朝鮮の定州出身で、1944年に結婚。1957年に離婚した。息子に文聖進(ソンジン)氏(76)がいる。

 金明熙(キムミョンヒ)は、延世大学の3年生だった54年に入信。翌年、日本で息子・喜進(ヒジン)を出産した。文鮮明が崔先吉と結婚していた時期だ。喜進氏は中学2年のとき鉄道事故で死去した。

 統一教会が行なう合同結婚式では、見知らぬ男女がマッチングされるだけでなく、霊魂と生身の人間のカップルもある。これを「霊肉祝福」という。1998年に行なわれた3億6000万組と称する合同結婚式で、金明熙は聖人ソクラテスと霊肉祝福を受けた。2020年に死去すると「聖人祝福家庭 金明熙女史協会聖和式」が行なわれた。聖和式とは、葬儀のことを指す。

漢江のほとりにそびえる63ビル(中央の一番高い建物) ©tokyoimages/イメージマート

 梨花女子大学の教師だった崔元福(チェウォンボク)氏は、常に文鮮明の傍にいて、韓鶴子夫人と長く同格の扱いだった。同じく98年の合同結婚式で、釈迦と霊肉祝福。06年に死去し、「信愛忠母様」と呼ばれている。

 サム氏の母・崔淳華さんは、前述の通り婚姻関係がなく、棄教したために金銭的な支援を受けられなかった。一族の多額の献金を取り戻すことも叶わず、母子は自己破産を余儀なくされた。