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悩みの交響楽に自分も参加できる
川上 他のみなさんはドストエフスキーのどこが良いとおっしゃっていたんですか。
頭木 ドストエフスキーの小説の登場人物って、みんな悩んでいますよね。Aが出てきて悩み、Bが出てきて悩み、Cが出てきて悩み……。悩みの交響楽みたいなものじゃないですか。そこに自分も参加できるんですよね。だから、「悩んでいるときには、いいねえ」とみんな言ってましたね。
川上 悩みと悩みがぶつかる、悩みのダイナミズムの中に自分も入っていける。一人じゃないという体感が大事ということでしょうか。
頭木 悩みの内容はちがっても、自分と同じように苦悩した人が、それをすでに言葉にしてくれているということは大きいですよね。悩んでいるときって、言葉にできることだけでなく、言葉にできない思いもすごくありますよね。何が辛いのかさえ、よくわからない。そのことに押しつぶされそうになりますから。
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