「都民への罰」まいばすけっとに反感を持つ人が多い理由
最近ではまいばすけっとに対して「都民への罰」など酷評も目立ち、反感を持つ人も多いようだが、それはこのインストア加工をまいばすけっとが行っていないことも影響しているのではないか。まいばすは生鮮品について、イオンの流通加工センターで小分け・パック詰めした商品を配送して、店舗で並べるだけにしている。
言い換えれば、余計な鮮度アピールを放棄している。客数、売り上げが少ないことを前提として「センター集中処理で流通加工コストを低減」「バックヤードなしで店舗の大半を売場として使用」「密集店舗網で物流効率を向上」「PB比率を上げることで粗利率を向上」といった意欲的な工夫を重ね、損益分岐点の低いスーパーを実現しているわけだ。
イオンはこのまいばすを2005年から20年かけて育ててきた。それは、大都市部における高齢化の進行で、買物移動距離の短い消費者層が大幅に増加することを踏まえ、鮮度や品ぞろえよりも「近さ」を優先したスーパーが必要とされることを予測した、壮大な実験だった。そして、今、まさに時代がまいばすに追いつこうとしている。
経済環境がデフレからインフレに変わったことも大きい。
スーパー業界が、きわめて労働集約的なインストア加工を続けられたのは、2000年代以降続いたデフレ環境下で、従業員の非正規比率を相当に高めてきたからであった。しかし、コロナ後は「人件費高騰」「光熱費高騰」「価格転嫁の困難」という三重苦ともいわれる環境変化で、業界が労働集約的なインストア加工を継続するのは難しくなりつつある。
これからスーパー業界の「寡占化」が進んでいく
もっといえば、今後もさらに深刻化する人手不足は、労働集約的なオペレーションの存続を許さないのであり、センター集中加工方式への転換は「不可避」となりつつある。
センター集中加工が主流になることが何を意味するかといえば、スーパー業界の多様性の喪失、ということになるのだろう。
ご存じの方も多いと思うが、この業界にはご当地スーパーという言葉があるように、全国各地に地場で頑張っているスーパーがいくつもあって、それが地域の特色のような存在となっている。こうして多様なスーパーが割拠できたのは、インストア加工という非効率な仕組みが、徹底的な効率化を求める大手にとって障壁となっていたからだ。
センター集中加工方式になるということは、チェーンストア理論の原則通りになるということであり、規模の利益が一気に働き、期間収益、投資余力の大きさが競争力に直結する、ということでもある。その結果どうなるのかといえば、答えは「寡占化」であり、これはスーパー以外のコンビニ、ドラッグストアといった業態の寡占化の状況を見ればすぐにわかる。
