生活必需品は「つまらない店」が大半に?

 コンビニ業界では上位3社で9割、ドラッグストア業界は上位8社(12月に予定されているウエルシア+ツルハの統合で、すぐ7社になる)で7割弱、ホームセンター業界についてもドラッグストア同様、上位8社で7割弱というのが、隣接する業態の現状である。

 対するスーパー業界は、近年イオングループをはじめ、各地で上位企業のM&Aが加速しているが、それでも上位8社(イオングループは1社でカウント)のシェアは、まだ5割にも達しない(市場規模は全国スーパーマーケット協会「スーパーマーケット白書2024」による2023年の数値=25.5兆円で計算)。

 それが、今後は上位企業の統合によってシェア2~4割相当が寡占される可能性がある。スーパー業界の市場規模は大きく、2~4割でも売上規模で5兆~10兆に相当する。過去20年ほどの間にコンビニ、ドラッグストアなどで進んできた業界再編が、スーパーにおいても起こるとすれば、正に激動の再編時代に突入する、ということになるのだろう。

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(全国スーパーマーケット協会「スーパーマーケット白書2024」より)

 ついにスーパー業界にも寡占化の時代が来る、ということは、一般論で考えるなら、消費者にとって「これまでの多様な選択肢が失われる」ということを意味する。周辺業界を含め、生活必需品の店は、大手チェーンによる効率性を優先する画一的な売場、より言葉を強めるならば「つまらない店」が、これまで以上に増えていく。買い物の楽しみも、相応に薄れていくだろう。

 そもそもチェーンストアは標準化、マニュアル化が原則なのであり、どこへ行っても金太郎あめのようなチェーンが収益を極大化するための理想的な理論だとされている。しかし、インストア加工を基本とした日本型スーパーは、デフレ時代の安い人件費を前提とした過剰サービスともいえるビジネスモデルであり、企業・労働者の立場からすれば決して望ましいものではなかった、ともいえる。われわれ消費者も低賃金、労働集約的な仕組みを前提としたサービスが変わっていくことは、甘受する必要があるだろう。

 まいばすけっとの例にもあるように、センター集中加工への移行は、首都圏、京阪神のような大都市部から進んでいくことになる。大都市部は、不動産コストの負担が大きいことに加えて、出店余地が少ないこともあり、インストア加工のスーパーがやりづらい立地だった。

 バックヤードのない小型店を大量に作る手法で、売り上げが3000億円弱となり、相応の利益が確保可能なチェーンとなったまいばすは、大都市小型店チェーンの成功事例となった。そしてその成功を踏まえ、まいばすに続けと大都市小型店に挑戦する企業も増えつつある。大都市小型店たちのによるシェア争奪戦の過熱や、大手既存スーパーの逆襲などについては、別記事〈イオンの「まいばすけっと」だけじゃない…セブンイレブンやトライアルまで参入する「殺風景スーパー」戦争のゆくえ〉にまとめたので、合わせてお読みいただきたい。

次の記事に続く イオンの「まいばすけっと」だけじゃない…セブンイレブンやトライアルまで参入する「殺風景スーパー」戦争のゆくえ

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