イオン系のスーパーで、都市部に増殖している「まいばすけっと」。最近は、画一的な店舗づくりで買い物が楽しくない、などとして“都民への罰”などの酷評も目立つ。

 しかし、実態を見ると、実はこうした「殺風景スーパー」はイオンだけでなく、各社が立ち上げ始めている。果たして日本のスーパーはこのまま、殺風景なものが大半を占めていってしまうのか。小売・流通アナリストの中井彰人氏が解説する。

(イオンプレスリリースより)

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都市部の次に郊外へも進撃を始めた「まいばすけっと」

 イオンは、2030年までにミニスーパー「まいばすけっと(まいばす)」の店舗数を、現状の倍規模となる2500店に増やす計画なのだという。そうなると売り上げも今の倍、6000億円ほどにはなるだろうから、現在のヤオコーやオーケーくらいの規模まで大きくなる、という宣言だ。

 現在のまいばすの店舗配置図を見ると、東京23区内~京浜間、及び東京通勤圏に偏っていることがわかると思うが、イオンはこれを少しずつ郊外へ拡張しようとしているようだ。

店舗網を見ると、集中出店しているエリアがよくわかる(日本全国スーパーマーケット情報より)

 まいばすの店舗物件を募集告知を見ると、都内では都下が八王子まで、神奈川だと相模原~県央あたり、埼玉で宇都宮線、東武東上線沿線、千葉だと総武線千葉以西と柏~八千代方面、といった辺りまで募集している。いわゆるロードサイドマーケットの境界である国道16号線内側の、鉄道沿線に沿って増やしていく、ということのようだ。

出店検討エリアでも、都内近郊が目立つ(まいばすけっと公式サイトより)

 イオンは、まいばすのさらなる広域化に備え、現在は25%ほどとしているPB「トップバリュ」の構成比率を50%に増やした店の実験も行っている。これは、人口密度低めの郊外地域への進出で、店舗あたり売り上げが下がることに備えて、高い粗利率を確保できるPB比率を高めて、利益率を改善しようとする試みである。

 まだ、その成否は不明だが、成功すれば、まいばすの展開地域は16号内側から境界域辺りまで拡大することも可能かもしれない。エリアの拡大に加えて、中心部の店舗密度を上げていけば、まいばすは、まだまだ大きくなれるだろう。

まいばすの独走に「待った」をかける競合も

 こうしたイオン・まいばすの独走に、待ったをかけようとしているのが、ちょっと前に西友を買収したことで一気に有名になったトライアルホールディングスである。

 福岡発祥のこの企業は、あのウォルマートをベンチマークしたトライアルスーパーセンターという大型ディスカウントストアを地方に展開して大きく成長、2024年に上場を果たした。2025年6月期には、売上8038億円、経常利益222億円という国内有数のチェーンとなっている。