逆張りで「鮮度」「品質」にコストをかけるチェーンも

 イオン、トライアル、セブンなどの例からざっくり見てきた通り、センター供給型スーパーの登場により、業界再編が本格化し始めている。

 近い将来、スーパーの売り場は、DXによる省人化、品ぞろえの効率化が進んで、無味乾燥な金太郎あめのような画一的店舗が増えていくのだろう。前述の3社のみならず、多くの資本力あるスーパーはセンターインフラとDXに投資することで、規模の利益を最大限に発揮しようとするからだ。このままいくと、スーパーの店頭はどうも無機質な感じになっていきそうなのだ。

 消費者はサービスレベルの低下や選択肢の減少という不利益について、必ず不満を持つ。それこそが、新たなビジネスチャンスなのであり、反対にコストをかけてでも人手をかけた生鮮売場、商店街的な接客販売を維持できれば大きな差別化要因になる。

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 既にそんな未来を想定した上で、新たなビジネスモデルに挑戦する企業も現れ始めている。その筆頭が、首都圏で今やイオン、ヨークに肉薄し、ロードサイドではトップシェアを競う存在になっている、ヤオコーである。

首都圏郊外で支持を集めるヤオコー(公式サイトより)

 ヤオコーは、高品質な商品をコスパよく買える店として、首都圏郊外部で高い支持を得ている。36期連続の増収増益で、2025年3月期は営業収益7364億円、経常利益325億円にまで成長した。その成長力は市場の評価も高く、食品スーパートップの株式時価総額を誇る。

 品質で勝負するヤオコーは、生鮮、惣菜のインストア加工による鮮度がウリである。切りたて、出来立てで評価が高く、「SPA推進部」という部署ができて話題にもなった。SPAとは製造小売業であり、この部署では生鮮や惣菜を加工・製造するセンターを運営し、インストア加工という最終工程は残しつつ、前工程をセンター化することで、品質のさらなる向上を目指していくという。

 今後、センター加工方式へと完全移行する企業が増えることを見越して、あえて最終のインストア工程を残し、差別化していく方向をヤオコーは選んだわけだ。首都圏郊外にとどまらず、中心部への進出を課題としてきたヤオコーにとって、インストア工程とバックヤード面積の極小化は、新たな都市型フォーマットにもつながる。環境変化をさらなるチャンスに変えて、ヤオコーの出店立地は首都圏中心部に拡張していくことになる。