イオン系のスーパーで、都市部のコンビニ跡地などにどんどんと増殖している「まいばすけっと」。どこへ行っても同じような品ぞろえなど、画一的な店舗づくりで買い物が楽しくないとして「虚無のショッピングゾーン」「都民への罰」に加え、「惣菜が壊滅的にまずい」といった酷評も目立つ。
しかし今後は、こうした「殺風景スーパー」とも呼べる業態がスタンダードになっていくかもしれない。小売・流通アナリストの中井彰人氏が解説する。
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なぜ「店舗飽和」なのに、まいばすけっとは店舗を増やせるのか?
イオン系のミニスーパー、まいばすけっと(まいばす)の増殖が続いている。
首都圏の人口密集地にあるバス停ごとにできる感じでどんどん増えて、2025年2月期は店舗数1204店、売上高が2903億円、営業利益で81億円までに成長した。図表1は、まいばすの近年の業績推移だが、2018年から売り上げを1500億円も伸ばして、規模がほぼ倍になっている。同じくイオン系で首都圏の食品スーパーを展開する子会社のUSMH(期中加入のいなげやは除く)が、この間に300億円弱の増収だったのと比べれば、いかに凄いかがわかるだろう。
では、なぜまいばすけっとはこんなに店舗を増やせているのか。これは、首都圏の人口密集地でも「ミニスーパー」なら出店する余地はたくさんあるから、ということに尽きる。まいばすは、コンビニサイズの店舗に、生鮮品を含めたスーパーとしての最低限の品ぞろえをしているのが特徴であり、コンビニ跡地など小さいスペースに居抜き出店して、店舗数を増やしている。
種明かしすれば「なんだ、そんなことか」と思われるかもしれないが、コンビニ跡地に居抜き出店できるスーパーなど、実はほとんどない。
日本においてスーパーは、生鮮品を小分けにパック詰め(流通加工という)するため、各店舗はバックヤードに加工場を必要とするから、である。魚食、生食習慣のある日本の消費者は、生鮮品の鮮度にかなりシビアである。「店で今、切りました」「さっきパック詰めしました」というインストア加工を行わないと、納得してくれない。
このインストア加工が全国標準となったことで、日本のスーパーは、店舗ごとに広大な加工場と大量の加工人員が必要な業態となり、他の小売より生産性が低い、労働集約的産業として続いてきた。

