大手と中小の協業が、今後は進んでいく?

 最後に、小売・流通アナリストとして個人的に最近お気に入りの事例にも少し触れておきたい。岐阜発祥で、今や中部地方一円と関西方面にも進出している、バローホールディングスの「デスティネーション・ストア」である。

 ちょっと前まで、バローのイメージと言えば、チェーンストア理論の徹底した具現者であり、標準化・集中化を軸に、物流効率の改善とPBの開発に邁進する、ある種、金太郎あめを目指す会社だった印象がある(個人の感想です)。ただ、直近で同社が既存店の転換を進めているデスティネーションストアは、ある意味、真逆の方向に振り切っている。

 生鮮売場に人手をかけ、特に鮮魚では魚丸ごとの接客販売を強化することで、際立った差別化を実現している。ざっくり言うと、効率性を追求することで得た収益を、生鮮売場の人件費に投入して、接客や提案で劇的な差別化を実現する、という構想だと解釈する。その結果、バローの既存店客数は目に見えて増加傾向となり、全体の売り上げ、利益が上昇している。

ADVERTISEMENT

 こうした先進的な取り組みと成果をみていると、スーパー業界の多くは、センター集中加工型に舵を切ることになるだろう。ただ、それによって画一化する売場に不満を持つ消費者は、人の手が加わったいろどりのある売場(人による提案、接客)≒かつての商店街テイストを待望することになる。

 人手をかけた生鮮売場が差別化要因となるのだが、このコストをかけられるのは、センターインフラへの投資が十分できる企業のみ。つまり、センターインフラを持てない中堅中小スーパーが生き残るためには、インフラを持つ大手との「同盟関係」が重要な選択肢となる。これが新たな再編の基本ロジックになるはずだ。一見トレードオフにみえる、効率性と接客の両立、という難題を乗り越える者が、スーパー業界の次の覇者となるのである。

最初から記事を読む 「虚無」と嫌われながらも大増殖…“まいばすけっと”から考える、日本人が「楽しい買い物」をできなくなる日

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。