かつて幼児教室で講師として働いていた著者は、そこで、子どもの意思に関係なく、小学校受験に必要な知識をどんどん教え込む状況に衝撃を受ける。子どもたちへの不自然な教育に違和感を抱き続け、やがて子どもの能力を伸ばす鍵は「親」が握っていると気づき、独自の教育法を開発。その内容を惜しみなく公開した本書がヒット中だ。
「育児書といえば、その多くはいかにして子どもを変えるかに焦点を当てたもの。しかし本書は、子どもを変えようとするのではなく、親が変わるというユニークなアプローチをとります」(編集部の大竹朝子さん)
親は子どもを監視・管理、あるいは献身的にお世話をするのではなく、まずは自分自身を理解し感情の安定した「幸せ体質」を得て、子育ての環境整備を行ったら、あとは子どもをほったらかしにする。そうすれば、子どもは自ら学べる子に育っていくと著者は説く。
環境整備とは、お風呂やトイレに地図のポスターを貼ったり、歴代首相の似顔絵がずらりと描かれたマグカップを日常で使ったりと、生活の中に子どもの興味関心を引き出す仕掛けを作っておくといったこと。また「天才ノート」と称された子どもの探究心を育てるツールや、習慣化を促すメロディ時計の活用など、実践的な方法も紹介。つまり、著者のいう「ほったらかし」は単なる“放任”ではなく、あくまで子どもが本来持つ好奇心や「育つ力」を信じた上での“戦略的ほったらかし”なのだ。
「当初は『ほったらかし』という強い言葉が読者にどう受け止められるかという不安もありました。しかし実際は、共働きで子どもをほったらかしにせざるを得ない親御さんと、中学受験などでつい手と口を出して先回りしてしまい、子どものほったらかし具合に悩む親御さん両方のフックになったようです」(大竹さん)
読者は10歳前後の子を持つ、30代から40代の女性が中心。だが丸の内や品川駅などビジネス街のリアル書店でも好調な売れ行きを見せているという。
「偏差値の高い大学に進学すれば子どもの将来は安心という時代ではなくなった今、ではどうしたらいいのかと悩む母親と、我が子の教育を妻任せにせず積極的に関わろうとする父親の両方に手にとってもらえているようです」(大竹さん)
