原宿が渋谷と大きく違うところ
――そもそも中川さんはどうしてそんなに、原宿に愛着があるんですか? 「原宿から世界にカルチャーを届ける」仕事の根っこにあるものなのかもしれませんが。
中川 高校の時から神宮前交差点にあったGAPの前にたまってたりして、原宿を僕なりにずっと見てきたんです。すると、この街って昔から色んなものが生まれているから面白いなって。ロカビリーとかも原宿からブームになったんですよね。
――その前には「竹の子族」とかも。
中川 ここ数年だと海外の人たちが日本の「カワイイ」に注目して、原宿から発信されるカルチャーをフォローしていますよね。これをもっと展開して、世界中に原宿というものを伝えてみたいなと思ったところはあります。あと、何より原宿のカルチャーには自由さがあると思うんです。ファッションでいうと同じ格好しなくてもいい雰囲気ってことです。そこは渋谷と大きく違うところで、特に僕がGAPにたむろしていた頃の渋谷は109全盛、みんなギャルってイメージでしたから。
――ガングロヤマンバの渋谷から1駅進むと、世界が違うという。
中川 それからこの10年で大きく変わったといえば、「読者モデル」という職業が成立するようになったことですね。これまでは学生時代はやっていたけど、読者モデルは卒業して就職するのが当たり前でした。それが今では、読者モデルのままインフルエンサーとしても活躍できる世の中に変わりました。
経験値が邪魔になる時代なのかもしれません
――そういったモデルの方々もマネジメントするお仕事をされているわけですが、10年やってると一回り以上年が離れている女性の考えていることとか、それなりにわかってくるものなんですか?
中川 いやいや、そんなことないですよ(笑)。難しいです、そこは。……というか、わからないままのほうが大事な気がしますけどね。彼女たちはひとりひとり、自分のやりたいこと、自信を持って活動している子たちなので、それをうまく引っ張ってあげるのが僕たちの仕事。そこに「これはこれまでの経験からするとこうだ」みたいな引っ張り方をしても逆効果になっちゃうと思うんです。
――成功体験を引き合いに出しても、どんどん時代は変わっているし。
中川 そうなんです、成功体験を押し付けてもいいことが起こりにくいという意味では、経験値が邪魔になる時代なのかもしれません。きゃりーとの仕事だって同じです。彼女の価値を最大限引き出すために、自分はよくわからなくても新しい感覚がわかるスタッフをチームに入れることもありますからね。だから、僕の仕事はいいチームを作る、いいキャスティングをするということなのかもしれません。人の価値を引き出すマネジメントの仕事って、それが大事なのかなって思っています。
(#2に続く)
なかがわ・ゆうすけ/1981年東京生まれ。東洋大学在学中からクラブイベント運営に携わり、2007年アソビシステム設立。
写真=平松市聖/文藝春秋