歴史人口学者のエマニュエル・トッド氏は、国・地域ごとの家族システムの違いや人口動態に着目する方法論により、『最後の転落』(76年)で「ソ連崩壊」を、『帝国以後』(2002年)で「米国発の金融危機」を、『文明の接近』(07年)で「アラブの春」を、さらにはトランプ勝利、英国EU離脱なども次々に予言し、国際的な名声を得た。最新刊『西洋の敗北と日本の選択』(文春新書)も大きな話題を呼んでいるトッド氏が、国際情勢や日本の行く末に鋭い考察を行った記事を厳選して紹介します。[全5記事]
真の脅威はロシアではなく米国だ 日本に勧めたい「何もしないこと」
「ロシアは安定化に向かっている国で、『主権』という考えに基づいて、自らの政治的空間の保全を目指しているだけなのです。世界の中心にあって崩壊しつつある米国は、我々すべてを吸い込もうとしています。つまり、EUの敵は、ロシアではなく…」…

イスラエルは神を信じていない
「まだ仮説にすぎませんが、イスラエルは国家としての意味を見失い、かつては国家の安全保障に不可欠な軍事手段だった『暴力の行使』が、自己目的化してしまったという印象を受けます」…

イランの核武装は何の問題もない
「日本の核保有が東アジアの地域的安定に寄与するのと同じように、イランの核保有は、イスラエルの暴走に対する抑止として機能し、中東地域の安定に寄与するはずです」…

ロシア・ハンガリーより愛をこめて
「『国家主権(国家の自立)』の重要性を今日、国民レベルで最も理解しているのは、おそらくハンガリー人たちでしょう。欧州のなかで独立を保ち、東欧のなかで例外的に『ロシア恐怖症(嫌い)』に囚われていないのはなぜか」…

「老人支配」を断ち切れ
「日本が抱える諸問題の根源は、出生率の低さにあります。人口減少を放置すると低成長になり、社会の新陳代謝がなされにくい。そのため『老人支配』が進み、自己変革のダイナミズムを喪失してしまうのです」…


