今まで生きてきて一番後悔していることは何ですか?――と尋ねたところ、「中学受験で地域トップの高校に進学したこと」と語るのは、60歳・無職の男性。

 成績が良くなかったのに「トップ進学校」に合格してしまった彼は、どんな人生を生きたのか? ごく普通の人々の悩みや暮らし、気になる行動をとことん調べた月刊「裏モノJAPAN」のルポルタージュをまとめた『調査ルポ この日本の片隅で~バズらない人生300人それぞれの事情~』より一部抜粋してお届けする。(全3回の2回目/続きを読む)

写真はイメージ ©getty

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成績が良くなかったのに「トップ進学校」に合格してしまった

 中学のとき、そこそこ勉強はできたんだけど、抜群に成績が良かったわけでもないのね。ただ、中3の夏休み前に、たまたまテストでいつも以上の点数を取ったもんだから、担任にいっそA高を目指せばどうだって勧められてさ。そこ、うちの地域で一番の進学校だったわけよ。悪い気はしないよね。で、必死こいて勉強を頑張ったら合格できて、家族ともども大喜びしたんだけど、これが転落の始まりになっちゃうの。

 要は授業のレベルが高すぎて、ついていけなくなっちゃったんだよね。もともと文系の頭なのに、2年で理系に進んだのも失敗でさ。実家が薬局やってて、僕は長男だから家を継がなきゃって責任感もあったしね。で、自分なりに頑張ったんだけど、高3の進級時にとうとう留年が決まって、そのまま退学しちゃった。

 それからはずいぶん迷走したよ。手に職をつけようと板前を目指したり、百科事典の訪問販売をしてみたり、いろんな仕事に挑戦してみたけれど、ちっとも長続きしなくてね。