今まで生きてきて一番後悔していることは何ですか?――と尋ねたところ、「語呂合わせで馬券を買わず1千万儲け損なったこと」と語るのは、64歳・アルバイトの男性。
彼はなぜ馬券を買えなかったのか? その驚愕の配当金額とは? ごく普通の人々の悩みや暮らし、気になる行動をとことん調べた月刊「裏モノJAPAN」のルポルタージュをまとめた『調査ルポ この日本の片隅で~バズらない人生300人それぞれの事情~』より一部抜粋してお届けする。(全3回の3回目/最初から読む)
◆◆◆
「語呂合わせ」で買おうと思ったけど…
何年か前だったかな、知り合いに競馬に行かないかって誘われてね。それまで競馬なんてほとんどやったことがなかったし、あまり行く気もなかったんだけど、相手がしつこく袖を引くもんだから、ま、じゃあヒマだし、いいかなって。
で、場外馬券場に着いてみると、3連単なんて見慣れない文字があってさ。知り合いに「何だいこれ」って聞いたら、つい最近導入された馬券で、当たればほぼ万馬券になるって言うじゃない。だから、こりゃいい、これで勝負してみようと思ったわけ。どうせシロートで勝てないだろうし、だったらせめてワクワクして遊びたいなってなもんでね。
案の定、ハズレばっかり続いたんだけど、何レース目かで知人がこんなことを言ったの。3連単なんて競馬好きでもなかなか当たらないんだし、下手な予想なんかやめて、語呂合わせで決めた方がまだいいかもよって。なるほどそれもそうかと思って、京都のなんとか杯ってレースで「14-1-10」を1千円分買おうとしたんだね。ほら、僕の名前は「イシイトオ」だから、その語呂合わせでね。でも、マークシートに印を付けて投票寸前のところで、やっぱイカンとなったの。1千円も賭けてるんだから、そんなふざけた買い方じゃなくて、やっぱりちゃんと考えて決めようと思って。
レースの後、腰が砕けたよ。
