何年働いても年収280万円に届かない
医療に関する国家資格や危険物取扱責任者資格などは必要なし。パソコンが操作でき、月に1、2回土曜日に出勤できることが条件。
「面接は本社で採用担当者と1回、それをクリアしたら病院内の事務所で現場責任者ともう一度面接。それで採用になりました。実にあっさりしたものでしたよ。これまでの職務経歴書なども求められなかったし」
賃金は時給制で1200円。1日8時間勤務で、欠勤がなければ皆勤手当が2000円支給される。
「残業はほとんどありません。あっても月に3時間ぐらいですね」
月に2回は土曜日でも通常診察しているし、大型連休があっても間の1、2日はやはり通常通りの診察をしているので、1か月の出勤日数は23~24日。月収はおよそ23万円ということだ。
「住宅手当、家族手当などは一切ありません、退職金もなし。契約社員はこれが相場ですよ」
夏季・冬季慰労金ありとなっていたので少し期待していたが、金額は全員一律3000円。ガッカリだった。
「年収は280万円に届かない。何年働いてもこの金額で変わらないと思う。SE時代の最高年収が約720万円だったから6割以上の減額です、もう力が抜けちゃいますよ」
今年の春闘は組合の要求に対して満額回答が続出とか、自動車メーカーの年間一時金が過去最高の7・6か月分だと景気のいい話が報道されていたが、樋口さんにとってはまったく関係のない話で気分が悪くなる。
「今までは病院内部のことなんて知らなかったけど、働いて1年過ぎるといろいろなことが分かってきた。医療の現場も非正規頼みなんですね。総合受付や会計窓口にいる女性の事務職さんは、病院職員の人だけでなく派遣の人がかなりいるんです。いくつかの派遣会社から来ているそうです。全員同じ制服を着ているので外部の人は分からないけど」