病棟で看護助手的な仕事をしている人も、別のメディカルサービス会社の所属。どんな病気なのか知らないが、防護服にゴム手袋という姿で患者を搬送するところを何度か目撃した。自分にはとても務まらないと思った。

「手術室や処置室の後始末も清掃サービス会社が担当しているそうです」

 手術器具の洗浄・消毒、手術室の清掃を任されているそうだ。

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「時給はビル清掃に比べたら少し高いらしいけど自分はやりたくないですね。血液が付着した脱脂綿やガーゼなどを回収するんでしょ。何かの細菌やウイルスに感染したらかなわない。マスクやゴム手袋を装着しても不安ですよ」

「ドクターは雲上人」

 病院の正規職員の人たちとの交流はまったくない。書類や物品の受け渡しのときだけ言葉を交わすことはあるが、個人的な付き合いは皆無。

「ドクターや薬剤師さんと喋ったことは一度もないな、請負会社の契約社員から見たらドクターは雲上人ですからね。事務方の人たちとも同じです」

 別の請負会社、派遣会社から来ている人とは若干の交流があるが付き合いは上辺だけ。お互いに余計なことは言わないよう用心している。今の仕事は重労働ではないし、それなりに他人様の役に立っていると思うが、じゃあずっとこの仕事を続けるかと問われたら「はい」とは言えない。

「職場の雰囲気は悪くはない。パソコン操作ができるので重宝されている。だけどなあ……」

写真はイメージ ©getty

 責任者にここで正規雇用になれる可能性はあるかと尋ねたら「それは無理」と一刀両断だった。

「うちは子どもが2人いまして。息子が大学2年生、下の娘は高校2年生なので教育費が大変なんです。わたしの今の収入ではとても賄いきれない、だから妻が頑張ってくれてるわけだけど」

 2人ともいざとなったら奨学金を受けると言っているが、今の奨学金は学生ローンみたいなもの。借金を抱えて社会人になるのはかわいそうなので学費だけはちゃんと出してやりたいと思っている。

「そんなわけで宅建士の資格を取って不動産営業に進もうかと考えているんです。3か月前から通信教育の宅建士講座で受験勉強を始めました」

 帰宅して夕飯を済ませたら2時間前後テキストを読んだり、過去問集を解いたりしているそうだ。