ただ6月から9月は、草木の若芽は伸びきって硬くなり、木の実はまだ実らせていないためクマにとって植物質の餌が減る。意外と夏は、餌が少なく飢える時期である。

ハチミツよりもサケよりもアイスクリームに飛びついた

クマが食べる餌に対する観察例や実験例を紹介しよう。

まず全国的にクマの好物であるカキの実。むさぼり食うとされているが、何でも食べるわけではなさそうだ。基本的に渋柿を嫌い、甘柿を好む。甘柿の実る木には繰り返し訪れて、一つ残らず食べようとするが、渋柿は食べ残しを散乱させることが多い。

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甘柿は、人間が品種改良して生み出した作物だ。ほかにも多くの農作物は、甘みを高め、渋み、苦みなどを減らすように品種改良を進めてきた。当然、人間が好む味にするためだが、クマにとっても好物なのだろう。

ヒグマを飼育している観光施設「のぼりべつクマ牧場」では、クマの好物に関する実験を行った結果を公表している。ヒグマの前にハチミツ、サケ、バニラアイスクリームを並べて、何を最初に食べるのかを試したところ、真っ先に食べたのがバニラアイスクリームだった。甘さでは負けないはずのハチミツよりもバニラアイスの方が甘い匂いが強いためかもしれない。果実でも、甘い実ほどよく食べたという。

観光客のソーセージの味を覚えたクマは射殺された

北海道の知床財団は、観光客が車の中から若いメスグマにソーセージを与えた事例を報告している。するとそのクマは、毎年国道に姿を現すようになった。そして車列に餌をねだるようになったという。ソーセージは、それほど魅力的だった。だがその結果、市街地にも出没し始め、小学校に近づいたことから射殺されたのだ。

新聞配達人がクマに襲われた事件のあった北海道南部の福島町では、観光客や登山者が「弁当やお菓子などのゴミを車から投げ捨てている」という声があった。また「畑に残飯を捨てる農家がいた」という報告もある。農家ならやってしまいがちだが、クマには美味しい餌の提供となる。そしてゴミの集積所が荒らされるようになったという。