平成11年度から21年度にかけて福島町を含む渡島半島地域で銃器によって捕獲されたクマ586個体の胃袋を分析した結果、7%に当たる42個体からゴミ袋が見つかった。
これは、人里に出没したり人を襲ったりしたクマは、ゴミを漁った経験を持つ確率が高いことを意味する。
山に餌があってもより美味しい食べ物を求めて人里に出没する
クマが秋の川で獲るサケに関する調査もある。クマはサケを手当たり次第に捕まえて食べていたのではなかった。太った個体を見極めて獲り、しかも食べる際は頭や皮など脂ののった部位を選んでいた。一方で産卵を終えて脂の落ちたサケには目もくれないという。
人間が好む食べ物はクマにとっても好みらしい。言い換えれば、人間が美味しいと感じる食べ物は、クマにとっても美味しいのだろう。農作物や生ゴミを食べたクマは、そんな味がわかるグルメになったのだ。
クマだけでなく、イノシシやシカも、野の餌より農作物を欲しがる傾向にある。いずれも実験で確かめられているが、だから山に餌となるものが豊富にあっても、野生動物は美味しい餌を求めて人里に出没するわけである。
「効率よく栄養を得られるか」で餌を選ぶ
ただクマが人里に求める餌は、「美味しさ」だけではなさそうだ。人間なら一口食べても吐き出す渋柿をそれなりに食べるように、味覚が人間並に敏感というわけでもないらしい。むしろ栄養価が嗜好に影響するという。
クマは、夏こそ繁殖期で体力を使う。秋になると冬眠に備えて体脂肪を蓄えなければならない。できるかぎり栄養価の高いものを食べたい。ドングリより人が栽培した甘い果実や農作物の方が、効率よく身体を太らせられるわけだ。サケも脂ののった個体の方が美味しくて栄養価も高いのである。
なかでも栄養価の高いのが肉だ。植物質の餌は、甘い果実などを除けばカロリーが少ない。その点、肉はタンパク質と脂肪の塊であり、圧倒的にカロリーが高いのである。
ちなみに草食動物は、草を食べてもセルロースを分解できない。そこで腸内細菌によって分解されて糖やタンパク質に変わってから吸収する。ただ変換効率は高くないから、莫大な量の草を食べないと身体を維持できない。その点、肉はすぐに栄養となる。