《本日17:30を目途に執務室からご退出ください》
山内氏は折に触れて相川氏に経営再建についてアドバイスしてきたが、業績は改善しなかった。業を煮やして、昨年6月には株主総会の場で直接、議長である相川氏の経営責任を質したこともあった。山内氏と相川社長の溝は深まり、ついに前代未聞の前会長追放劇が起こる。
〈昨年7月30日のことである。正午前、副社長の岡田正彦が監査役の林隆と連れ立ち、山内のいる名誉顧問室を訪れた。A4用紙1枚の書面を差し出した。そこには、次のような言葉が書かれている。山内は思わず目を見開いた。
《本日17:30を目途に執務室からご退出ください》〉
山内が言う。
「大成建設に縁もゆかりもない人間ならいざ知らず、私は社長、会長として16年も会社に尽くしてきたつもりです。あまりにひどい話でしょう。口封じのために早く山内を追い出そうとしたのでしょうけれど、ある意味、これは墓穴を掘っているのではないでしょうか」
結果、山内は今年4月18日付で大成建設と相川氏を提訴。地位確認等請求という民事事件で、要するに、名誉顧問としての復職を求める裁判である。
発売中の月刊「文藝春秋」11月号、および月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」では、森功氏による「大成建設の天皇、大いに語る」を掲載。山内氏が株主総会に出席し、相川社長の経営責任を直接質した場面の詳細や、解雇6日前の昨年7月24日に、大成建設が山内氏に対して送った「当社の経営に一切介入しないこと」などとした申し入れ書の内容についても詳述している。
