「うち(大成建設)と安倍、菅政権とは非常に良好な関係を結んできました。安倍政権下では、東京五輪・パラリンピックのメイン会場となった国立競技場の建設を受注することができました。しかし、その一方、リニア中央新幹線の工事では談合事件に直面し、えらく苦労しました。やはり企業活動と政治は切り離せないのです」

 ノンフィクション作家・森功氏の取材に、そう語ったのは、大成建設の山内隆司前会長(79)である。2007年から同社の社長と会長を16年間務め、「大成建設の天皇」と呼ばれた山内氏。『文藝春秋』11月号(10月10日発売)から、森氏執筆による山内氏の“独占告白連載”がスタートした。

大成建設の山内隆司前会長 ©時事通信社

前代未聞の前会長追放劇

 この連載では、安倍晋三政権から菅義偉政権下において、大成建設が国策と共に歩んで実績を積み上げてきた実態が浮き彫りにされる予定だ。連載第1回は、いわば序章。山内氏が今年4月に古巣である大成建設、及び相川善郎社長を相手取って起こした民事訴訟にいたるまでの社内抗争が描かれている。山内氏は昨年、名誉顧問の職を突然解かれた。なぜ“天皇”は解任されたのか。

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安倍総理と新国立競技場の模型を視察 ©時事通信社

 事のあらましはこうだ。2023年3月に会長を退任した山内氏は翌月、名誉顧問に就任した。この間、大成建設の業績は悪化していく。相川氏が社長に就任した21年3月期決算まで大手ゼネコンの中でトップだった時価総額は、鹿島建設、大林組に抜かれ、3位に転落した。