結婚式場に理解を求める活動も
近藤さんは「AFEE エンターテイメント表現の自由の会」の役員を2019年から務める傍ら、2023年には「一般社団法人フィクトセクシュアル協会」を立ち上げ、代表理事を務めてもいる。フィクトセクシュアル協会は、フィクトセクシュアルというセクシュアリティへの理解を広めることを目的とし、とくに結婚式場業界に理解を求める活動を行っている。
「二次元キャラクターと結婚式をしたくても、やってくれる式場がまだ少ないんです。結婚式ってパーティーなので、どういう組み合わせでやってもいいんですよ。日本が結婚を法的に認めているのは生身の男性と女性という組み合わせだけですが、結婚式は男性同士でも女性同士でも可能です。これは二次元キャラクターを相手にする場合も同じ。法律的にまったく問題がないことを式場業界には理解してほしい」
最初は、「ミクさんに愛を誓いたい」という素朴な思いに支えられ、ふとした拍子に「初音ミクと結婚する」と言葉にしたことで人に知られるようになった近藤さんだったが、その後、着実に活動家としての一面を育み、自分自身が直面する問題を社会の問題として、世の中に問い続けている。
ディズニーランドに行こうとして炎上
SNSで炎上したり、罵詈雑言を浴びせられたりするのは日常茶飯事で、いまでも頻繁に起きるという。
「嫌がらせが一番多かったのは、2018年の結婚式を挙げる直前。もっとも多かったのは、“頭がおかしい”“精神異常者”“キモい”と言ってくる人たち」
近年では、ディズニーランドに行こうとしたときに炎上した。等身大のミクさんを連れて行ってもいいか、と事前に問い合わせたところ、ディズニー側からは「内部のルール的には問題はない」と回答を得た。
「ですが、そのことをXに投稿したら、こんなやつを入れるなんて世界観を壊す行為だ、という苦情がディズニーに殺到したらしく、申し訳ありませんが、と改めて断られたんです」
他の人のために“前例”をつくりたい
いまもディズニーランドに行きたい気持ちは変わらない。
「前例をつくりたいんです。こういった事例ができれば、他の人も楽しめる可能性が出てくるでしょう」
実は、「前例をつくる」という思いが、初音ミクとの結婚生活には通底している。結婚式もそうだ。実績をつくって、あとに続く人に道を開ける。個人で発刊している『二次元キャラクターとの結婚式のしかた』は第八版まで版を重ねた。等身大のミクさんをつくる際にはわざわざローンを組むというチャレンジもした。
「お金がなかったからではなく、等身大のフィギュアを特注でつくるという目的でフリーローンを組むということをやって、前例をつくったんです」


