1999年、8年勤めたフジテレビを退職後、結婚。フランスに移住して26年。パリや南仏を拠点に、ライフスタイルやファッションについての執筆、発信を続けているフリーアナウンサーの中村江里子さん(56)。

 先ごろ、イタリア・ミラノに住むことも発表した中村さんに日本での暮らしから現在に至るまでを振り返ってもらった。(全3回の2回目/続きを読む)

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30歳で退職という苦渋の決断、その理由とは

――入社後は、小倉智昭さんが司会の朝の人気番組『どうーなってるの?!』を長く担当。にわかでない上品さ、少し浮世離れした感じで圧倒的な人気を誇っていましたが、10年足らずで退職されたんですね。

中村 1991年に入社したんですが、ある時期からあまりに忙しくなり、仕事に対する姿勢が誠実でない自分が出てきて、これは自分の姿ではないと悩むようになり99年に退職しました。意外と思われるかもしれませんが、結構真面目な性格なもので。

――とにかく真面目で誠実という印象しか受けませんよ! 不器用なところがまた愛らしいというか。

中村 そうですか? それならよかったです、ありがとうございます。真面目でもあるし、仕事をしっかりやりたいタイプなんです。

会社員時代の中村江里子さん

『どうーなってるの?!』は、小倉さんの進行がいつも素晴らしく、私は何もできませんでしたが、一生懸命ついていって、楽しみながらやれていました。ところがある時から、本番中にその次の仕事、別の仕事のことも考えるようになってしまい、目の前のことに集中できなくなっていったんです。

 考えようによっては、いろんなことを同時にできる、頭を使い分けているとも言えるのでしょうが、私の中では「なんて失礼なことをしているんだ!」と。たった1時間半、目の前の仕事に集中できないのであれば他のことに関わっても同じようになってしまう。こんなことを続けていたら、小倉さんに話を向けられても返せないし、ことによっては放送事故にもつながるんじゃないかと。

 体力はあるほうなので、いつもギリギリのところで頑張れていたと思うのですが、だんだん体も不調が出てくるように。そんななか、番組の取材中に、落馬して骨折。医師からは入院するよう言われましたが、休むことも、メディアに怪我を知られるのも嫌で、コルセットをして番組に出演していたんです。そうしたらお腹周りがふっくらとしていたために妊娠疑惑が出て……。

――裏を取らず、見た目だけでそう書かれたわけですね。

中村 週刊誌の記者さんがネタ欲しさに(笑)家の前で待ち伏せなんてこともしょっちゅうありました。いずれにしても、知らない間に溜め込んでしまった疲れやストレスが身体に出てくるようになり、まずは一度リセットしようと、たまたま30歳になった1999年に退社を決めました。

 当時、局勤務の女性アナウンサーには「30歳定年説がある」など囁かれていたなかで、ちょうど30歳で辞めることになり、苦渋の決断でした。でも、その時の判断のおかげでいまもこうして元気に過ごせているんだと思います。