「かが」は挑発をものともせず
護衛艦「あけぼの」はじめ、豪海軍フリゲート「ブリスベン」、カナダ海軍フリゲート「ヴィル・ド・ケベック」、さらにノルウェー海軍のフリゲート「ロアール・アムンセン」は、巧みな操艦で「798」の進路を変更させ、日英両空母から遠ざけているようにも見えた。
中国の挑発を「かが」はものともしなかった。南海の日差しで飛行甲板は身を焼かれるごときの蒸し暑さだったが、多国籍艦隊との各戦術訓練を始め、英豪海軍艦艇との洋上補給、さらに英海兵隊との実戦的訓練等も予定通りにこなし、自身の戦術技術の向上と各国海軍との連携強化という当初の目的をも達した。
この海域で力による現状変更を試みようとする中国に、その企図を挫かせるに充分なプレゼンスを示すことができた。
その後、護衛艦「あけぼの」は、「IPD(インド太平洋方面派遣)25」の一環として、「ハイマスト作戦」遂行中の英空母打撃群と航海をつづけながら、マレーシア沖に向かった。
英空母での艦上取材がドタキャンに
そして、9月下旬、84年前の12月10日の「マレー沖海戦」で帝国海軍航空部隊と激戦の末散った戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」と重巡「レパルス」、さらに日本側攻撃機の乗員ら日英の両戦死者を追悼する日英合同洋上慰霊祭に参加した。そして「かが」は無事、母港の呉に帰投した。
しかし、本航海で唯一の期待外れは、楽しみにしていた英空母「プリンス・オブ・ウェールズ」に移乗してでの艦上取材がドタキャンされたことである。詳細は言えないが、「こんな個人情報も報告せなあかんのか」と思うほど、乗艦前に英側へ提出した書類は細部まで申告が求められていた。
空母艦内も飛行甲板上も機密だらけなのは不肖・宮嶋でもわかる。日英、日米の安全保障を左右しかねない防衛秘密を、日本のオールド・メディアにさらすことを、栄光あるロイヤル・ネイビーがためらったのだろうか。
中朝露の度重なる侵略や挑発に対して「イカン」としか言えなかった政権を選びつづけたのは、我ら自身である。
日本の憲政史上、初の女性の陸海空自衛隊最高指揮官にまもなく就任するであろう次期総理大臣には、そこのところをぜひ期待したい。
撮影=宮嶋茂樹
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