師匠からの手紙を宝物に

 もしさんまが松之助を師匠に選ばなかったとしたら、どうなっていたのか。

 さんまは若い頃、交際していた彼女と東京に駆け落ちしたが、半年で大阪の師匠の元へ帰る。温かく受け入れた師匠だが、以降、明石家さんま以外の弟子を一人も取っていない。

 そして「さんまは生涯唯一の自分の弟子である」ということであろう、さんまが人気芸人になってからも週に1~2通の手紙を自宅に送っている。読書家の師匠が感じたことやさんまの仕事のことや般若心経や禅の話。

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 例えば中国の思想家・荘子から引用した文を添えて「人間が一億人いれば、一億の考え方がある。……だから自分の意見を通そうとするとそこに争いが起きる」など……。

 さんまは後にこの松之助師匠からの手紙の事を、ある雑誌の取材で「私の宝物は松之助師匠から自分に届いた手紙です」と写真付きで紹介している。

 2019年2月22日に亡くなった笑福亭松之助師匠の落語や番組の映像は、今でも沢山残っているが、そこにはさんまがよく言う“なんとも言えない心地いい空気“が流れていた様な気がする。それは「品格」と言うのか、「粋」と言うのか、あるいは「洒脱さ」と言うのか。

 とにかく、今でも明石家さんまが大切にしている要素に満ちている。