日本を動かす官僚の街・霞が関から“マル秘”情報をお伝えする『文藝春秋』の名物コラム「霞が関コンフィデンシャル」。最新号から、ダイジェストで紹介します。 

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日米合意の行方

 次の政権が必ず引き継がねばならない宿題は多い。最も重いテーマが日米関税合意の実行だ。

 ドナルド・トランプ米大統領と直接交渉した赤澤亮正経済再生担当相は「ドヤ顔で手柄話を語るばかり。中身がさっぱり分からない」(経済官庁幹部)と、政権内の評判は芳しくない。

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赤澤亮正・経済再生担当相 ©時事

 赤澤氏を補佐した経済産業省の荒井勝喜通商政策局長(平成3年、旧通産省)も厳しい立場だが、赤澤氏がハワード・ラトニック米商務長官と良好な関係を築いたのも、荒井氏ら裏方の手助けがあってこそ。自動車産業が米国への投資をためらう中で、国際協力銀行や日本貿易保険を使う案を考え出した。「荒井氏はさすがに知恵者だ。金額も含めてスケールが大きい」(元事務次官)と感心されている。

 だが、対象となる投融資案件の選定は米側に主導権を握られ、どんな要求が飛び出すかはっきりしない。荒井氏の部下のひとりは「腹案はあるのだが、米側の出方次第だからまだ説明できないようだ」と慮る。

 国際協力銀行にも不満が残る。「交渉終盤になって寝耳に水に近い形で知らされた」(幹部)という。同行が手がける発展途上国への投融資に比べ格段に規模が大きく、「資金調達やプロジェクトの進捗管理に不安がある」(同前)。元国税庁長官の林信光総裁(昭和55年、旧大蔵省)も赤澤氏と行動をともにしていた三村淳財務官(平成元年、同)に何度も電話し、合意内容を確認したようだ。

 難しい交渉は人材を育てる。経産省の藤井亮輔米州課長(12年、旧通産省)は「日本以外の国と米政府の交渉にも目配りし、日本が有利になる点があれば遠慮なく取り込むべきだ」と早くから訴えてきた。

この続きでは、今後のトランプ大統領との交渉の中で“キーパーソン”となる3人の人物について言及しています〉

※本記事の全文(約4500字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2025年11月号に掲載されています(霞が関コンフィデンシャル)。全文では下記の内容をお読みいただけます。

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