「最初に友達からヤクザの男の人を紹介されました」

 一般にはヤクザのシノギである。つまりフリーで個人営業するのではなく、ヤクザの威光で組織化されているから友達も「フーゾクで働いている」と言ったのだろう。

 僕の予想を裏付けるように、華奈江は続ける。

「最初に友達からヤクザの男の人を紹介されました。そう、ウチらのそばにいたキャップの男の人です。そしたら、その人から『やり方がわからないだろうけど、友達に付いていって。友達から近い距離にいれば、あのコがどうやって(売春をして)るかわかるから』」と言われて。

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 マネして近くに座っていたら、不思議と客の男の人が声をかけてきたから、『ああ、こうやってやるんだ』って思いましたね。簡単だなって思っちゃったんですよ。

 あとは特に何も指導されませんでした。もちろんプレイの講習もありません。

 実際にやってみるとやっぱり簡単でした。だって、ただ座ってるだけで自然に声をかけられるんですよ。それで何となく値段を決めて交渉して、お互いOKだったらそのままホテルに。ダメだったらその場で断る、みたいな。

 1本(ひとりの客)につき2千円の場所代を払う決まりでした。ヤクザの人は、最低でもふたりが近くにいて、私たちを見張ってくれていました。私服警官が来て、それを見抜けずに女のコが付いていっちゃうとホテルに入る前にパクられちゃうっていうのが、その理由です。ヤクザの人が『アイツ、私服っぽいから気をつけなよ』とかアドバイスくれていたんです。

 客は40歳前後のオヤジが多かった。年齢? 18か19歳って誤魔化してました。だから客は実際の年齢を知らなかったんだと思います」

写真はイメージ ©getty

 華奈江は淡々と話した。これは普通のアルバイトだと言わんばかりに。そこには犯罪の念など微塵も感じられない。私は単にカラダを売っているだけ。臆することなき態度でそう主張する。

 しかし16歳が路上で売春することが普通である、はずがない。あまりに現実離れして聞こえ、歯牙にも掛けない作り話だとイラつきさえ湧いてしまう。

 だがこれは、ドラマの台本を読み上げているのでも何でもなく、向かいにいる少女の実体験だ。それが、ディテールに至るまで再現された華奈江の話から痛切に感じられる。

 華奈江がやっているのは、カラダと引き換えにカネを得る仕事だ。どんなにカネが必要だろうと、そうそう割り切れるものではない。家にお金を入れないといけないとか、何か借金を抱えているとか、置かれた境遇に事情があるのだろうか。

次の記事に続く 「1万円でブーツのニオイを嗅がせて」と頼んでくる中年男性も…16歳少女が“50人以上にカラダを売る”ほど「立ちんぼビジネス」にのめり込んだ理由

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