借金でも家出でもなく、動機は「遊ぶ金が欲しかった」。ヤクザに“場所代”を払い、警察の見分け方まで叩き込まれた16歳の少女・華奈江は、多い日で14万円を稼ぎ、50人以上と関係を持った。

 しかし、好きでもない相手に、カラダを売り続ける生活に疲れた彼女は足抜けを決意。ケツ持ちのヤクザたちの「意外な反応」とは……? ノンフィクションライターの高木瑞穂氏の文庫『ルポ 新宿歌舞伎町 路上売春』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全3回の3回目/最初から読む

写真はイメージ ©getty

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彼女がカラダを売り続けた理由

「ハッキリとは覚えてない」というが、少なく見積もっても200万円は稼いだことになる。

 稼いだカネは、多くは目先の欲望を充足させるべく、洋服を衝動買いしたり、豪華な焼き肉を食べたりして散財した。弱冠16歳にしてはありえないほどの大金を手にし、日々の生活は華やいでいったが、そのぶん、股が裂けたり性病になったりとカラダは悲鳴をあげるようになった。

 それでもカラダを売り続けた理由は、あくまでカネだ。

「客とか彼氏とか関係なくセックスは好きじゃない。別に気持ち良くないし、擦れて痛くなるだけだし。だから本当にお金のためだけにやってた。

 初日は1本しか付かなかった。愛想笑いしたり、感じてるフリをしたり、常に演技をしてなくちゃいけないから、とにかく(オジさんに抱かれるのが)嫌で、『あっ、風俗ってこんなにキツいんだ』って思った。でも、終わって2万5千円もらったとき、『こんな短時間でコレだけもらえるの、ヤバくない?』って心が晴れた。で、家に帰って計算したんです、『4人我慢したら10万じゃん』って。

(オヤジとセックスする)抵抗? どんなにお金を積まれてもありました。でも、金額が高かったらあんまり嫌な顔をしないようにと、演技で感じてるフリをしてやり過ごしていました」

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 寒空のなか路上に立ち、買われればそのままラブホテルへ。いつしか沈痛な思いに苛まれるようにもなった。