「これが本当に道路なのか…?」

 道はあった! 絶壁の下に、小さなすき間が開いていて、そこに道が続いている。トンネルなのだろうが、トンネルにはほど遠い外観で、岩肌に開いた横長の割れ目にしか見えない。「これが本当に道路なのか……?」「こんな低いすき間を自動車が通れるのか……?」と心配になってしまう。

岩壁が大きすぎるため、高さが2.5メートルもあるように見えない

 手前で一旦停車して様子をうかがうと、きちんと高さ制限の道路標識が立っていた。高さ2.5メートルと書かれているので、普通車だったら余裕の高さ。岩壁があまりにも巨大すぎて、2.5メートルがとても低く見えたというわけだ。

ここでロッククライミングが行われていることもあるという

 岩の下に開いた横長のすき間に車で突入する。一応トンネルということになるのだろうが、トンネルと呼ぶにはあまりにも違和感がある。“岩感”があまりにも強すぎるのだ。

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いざ内部へ

 内部は荒々しい岩肌がそのままになっており、素掘りの状態だった。

隧道内部は素掘りの状態だ

 入ってすぐに道は直角にカーブしており、非常にアグレッシブな線形をしている。文明を感じさせない岩肌に直接取り付けられた反射板が、ここが道路であることを主張しているようだった。

隧道内部。岩肌に直接取り付けられた反射板が、ここが道路であることを主張しているよう

 トンネルの全長はわずか32メートル。しかし、内部でカーブしており出口が見えないため、長く感じる。岩のすき間を車で走るという、これまでの人生で経験したことがない状況に驚きながらも、私は興奮がやまなかった。通過した後もトンネルのことが気になり続け、数キロ先でUターンしてトンネルに戻ったほどだ。

 これほどまでに訪れる全ての者に圧を与え、圧倒的な存在感を放つトンネルは、全国を見渡しても他にないだろう。いったいどのようにしてつくられたのだろうか。

 調べたところトンネルは、“羽山第二隧道”という名称(隧道=トンネルの意味)で、偶然にも同じ日に訪れていた高梁市吹屋地区の発展に大きく関係したものだと分かった。