「結局9年くらいかかってるんです」
ノンフィクション作家の田崎健太氏がそう振り返るのは、芸能界最大のタブーとも言われた人物たちへの取材をまとめた『ザ・芸能界 首領たちの告白』(講談社)。
文藝春秋PLUSの番組「+HISTORY」に出演した田崎氏が語ったのは、バーニングプロダクション創業者・周防郁雄氏への取材秘話である。周防氏といえば、業界では「赤坂」という地名で呼ばれ、本名を口にされないような謎めいた存在だった。(全2回の1回目/続きを読む)
(初出:「文藝春秋PLUS」2025年9月25日配信)
【取材、顔出しNG…芸能界のドンたちの告白】取材に9年かかった|バーニング、ホリプロ、吉本、ライジング…支配者たちが取材を受けた理由|消えゆく週刊誌ジャーナリズム|今後芸能界はどうなる【田崎健太】
〈郷ひろみの移籍〉と〈サザンの版権〉2つの疑問があった
田崎氏が周防氏への取材を決めた動機は明快だった。
「まず僕は会いたい。どんな人なんだろう、という人間的興味です。2つ目が、ある質問をぶつけたかった」
その質問とは、〈郷ひろみがジャニーズから移籍した経緯〉と〈なぜサザンオールスターズの音楽出版権を持っているのか〉だった。
「(アミューズに所属する)サザンという国民的バンドの音楽出版権をバーニングは持っている。だから芸能界を支配している、という1つの噂がありました」
芸能界では会えない人ほど噂が先行する。「誰々が仕切っていて、いらんことを言うと消されるとか、いろんな話があるじゃないですか」。しかし田崎氏は、「本当に、法治国家の日本でそんなことが起こるんだろうか」という疑問から、エビデンスに基づいた取材を心がけていた。
