芸能界の重鎮たちがついに口を開いた。ノンフィクション作家の田崎健太氏が9年がかりで取材した『ザ・芸能界 首領たちの告白』(講談社)には、これまでほとんど表舞台に出ることのなかった業界の「ドン」たちの証言が収められている。
中でも異彩を放つのが、B'zやZARDを手がけたビーイングの創業者・長戸大幸氏だ。40年間取材を受けてこなかった彼が、なぜ今になって口を開いたのか。文藝春秋PLUSの番組「+HISTORY」に出演した田崎氏がその舞台裏を明かした。(全2回の2回目/はじめから読む)
(初出:「文藝春秋PLUS」2025年9月25日配信)
取材のきっかけは一通の手紙から
長戸氏への取材は、田崎氏による手紙から始まった。「知り合いの方が長戸さんを知ってるということで、手紙を書いて彼に託しました」と田崎氏は振り返る。
「父と長戸大幸さんが滋賀県の同じ高校出身なんですよ」。かたい進学校出身という共通項に加え、「関西の音楽シーンがどんなだったのか、僕も昔バンドやってまして」という音楽的な興味を伝えた。
実際に会った長戸氏の印象を、田崎氏は「ソフト」「賢い人」と評する。「関西の柔らかい、大阪というよりは京都、滋賀寄りの柔らかなタッチの方」だという。
長戸氏は元々ミュージシャンで、デビューも果たしている。しかし、表に出るよりも裏方としての資質があったのではないかと田崎氏は分析する。「いっぱいバンドを作ってきたそうです。それで、自分よりうまいギタリストやボーカリストを集める。そうすると、メンバーが引き抜かれていく。その結果、俺はいつまでも引き抜かれなかったんだよ、と言っていた」と長戸氏の笑い話を紹介した。
