OpenAIのサム・アルトマンCEOが、12月からChatGPTで成人ユーザーを対象にエロティカ表現を解禁すると発表した。年齢確認を導入し、成人と認定された利用者にのみ開放されるという。AIが性的な会話を交わす――それはかつての空想が現実になった格好だが、同時に“表現の自由”の裏側で、金融検閲という冷たい現実がすぐそこまで迫っている。

サム・アルトマン ©時事通信社

 ChatGPTがエロティカに踏み込めば、VisaやMastercardといった国際カードブランドから取引停止の圧力がかかる恐れがある。これまでアダルトゲームや2次元画像の販売サイトが経験してきたように、「不適切」と見なされた瞬間、決済ルートが遮断され、事業が一夜にして凍結されることすらある。

DMMやpixivFANBOXは、Mastercatdとの契約が終了

 表向きは「ブランド保護」や「倫理基準遵守」だが、実態は少数の金融企業が世界の創作活動を左右する“見えない検閲システム”である。カード会社の倫理コードは法律よりも強く、いったん発動されれば「経営判断」の範ちゅうのため政府ですら介入できない。まさに金融による言論統制の構図だ。

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 ゲーム配信大手Steamでは、オーストラリアの女性団体「Collective Shout」の抗議を受けて、VisaとMastercard関連の決済代行会社が圧力をかけ、多数のアダルトゲームが削除された。DMM.comは2022年、Mastercardとの契約を終了したが、原因は成人向けコンテンツへの介入だとみられている。pixivFANBOXやDLsiteでも同様の現象が起き、近親相姦や獣姦などが“カード会社の倫理”によって封じられた。

 こうした構造が定着した今、ChatGPTが同じ轍を踏まない保証はどこにもない。OpenAIが一度でもVisaやMastercardに“出禁”とされたなら、月額課金制のChatGPT Plusそのものが決済不能に陥る。AI業界にとっては死刑宣告にも等しい。

 OpenAIは年齢確認や出力制御によって安全対策を整えていると説明する。しかし、AIが生成する膨大なテキストや画像の中に、もし1つでも過激な描写が紛れ込めば、団体の通報→メディアの炎上→カード会社への抗議→決済停止という連鎖は避けられない。