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指導者として「我慢強さ」と「厳しさと」

 森保の我慢強い性格は、チーム作りにプラスに作用している。

現役時代の森保、Jリーグでは293試合出場15得点の成績を残した ©文藝春秋

 練習では細かく、丁寧に指導し、やろうとしたことができない場合も諦めず、できるようになるまでつづけた。戦術的な理解度が低い選手には居残りで教えた。練習が終わるとサッサと帰る監督が多い中、森保は用事がない限りは最後までピッチにいて選手の練習を見たり、練習の手伝いをするなど選手と真摯に向き合った。そういう日々の繰り返しの結果、青山敏弘や高萩洋次郎、塩谷司、浅野拓磨のように才能を一気に開花させ、ピッチで輝く選手を輩出していった。

 もちろん、厳しさもある。

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 特定の選手に頼らないポリシーは、イコールコンディションの良さを重視し、動ける選手を試合で起用するということでもある。そのため、当時エースだった佐藤寿人さえも特別扱いはせず、調子が今ひとつだとスタメンから落としたり、動きが落ちたと判断すると後半の早い時間に交代した。それもすべて勝つためであり、苦い思いをしたドーハの経験が活きているからである。

もう広島時代の「ポイチ」ではない

 そんな森保が日本代表でどんなサッカーを見せてくれるのか。

 広島時代のサッカーを継続するかどうはわからない。その時代は限られた人材でできるサッカーをしていたからだ。また、広島の監督を辞任して以降、世界のサッカーを見て回っており、昨年の9〜10月にも1人で欧州視察に行っている。コーチとして参戦したロシアW杯でも世界の今のサッカーを目に焼き付けた。広島時代の成功体験にプラス、世界を見聞することで多くのことをインプットし、監督としての器は確実に大きくなっている。もう広島時代のポイチではないのだ。

1968年8月23日生まれの49歳 ©文藝春秋

 それだけに、どんなメンバーを選び、どんなサッカーをするのか、楽しみでしかない。クラブと代表とは違うと今後を不安視する声も大きいが、今まで地道にチームを作り、結果を出してきたようにやればいい。それを貫く図太さは持っている。

「ドーハの悲劇」を経験した個性的なメンバーの中で、森保は一番最初に日本代表監督になった。2022年は、自らのW杯出場の夢が散ったカタール・ドーハでW杯が開催される。

 そこに日本代表監督として29年ぶりに帰還を目指すのは、何かの因縁だろう。しばらくは森保監督の手腕に期待しようではないか。