フランスの優勝で幕を閉じたロシアW杯。感情的にはクロアチア優勝をと思ったが、フランスは強かった。決勝戦で、フランスは序盤全く攻めることができず2−1になった時点でもまだシュート数はゼロ。1点目は相手のオウンゴールで、2点目はPKだった。

 そんな守備的ないわゆる我慢のサッカーを、個性的で自己主張が強いと言われるフランス人たちがよく成し遂げたものだ。雰囲気の良さ、仲の良さも伝わってきた。2010年の南アフリカ大会では、大会中に大っぴらな監督批判と、監督による選手批判が表面化しチームが瓦解。2敗1分でグループリーグ敗退したことを考えると、ディディエ・デシャン監督の手腕のすごさがわかる気がする。

われらが西野朗監督の手腕について考えたい

 指揮官の手腕といえば、とやや強引ではあるがやはり西野朗監督の手腕について考えたい。笑いの絶えない記者会見はハリルホジッチにはできないものだったし、強気な采配は光った。しかし、現地で取材してもっとも強く印象に残ったのは「つかみきれない人物」だということだ。

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“つかみきれない男”西野朗 ©JMPA

 監督就任直後は、「選手からの意見を吸い上げる監督」だという話が多くの選手から聞こえてきた。「雰囲気は変わった」と主将の長谷部誠を始め、大半の主力はそう言った。若手からは気を使ってか「雰囲気は前から良かったので」と煮え切らない返事が返ってきたが……。 選手たちからすれば、「監督の指示を言葉にして確認できる」(ハリル時代はそれさえできなかったそうだ)、「意見を言うことを良しとされる」、それだけで不満が半減したようなものだった。

選手からは「何を考えているのかわからない」

 だが、それとは裏腹に「何を考えているのかわからない」、というようなコメントも聞こえてきた。意見を吸い上げる一方で、指揮官の意図がわからないというのだ。就任から日が経たないうちは西野監督としての意思表示、具体的な方針の表明といったことは少なかった。

「監督がこう言っている」という話が選手たちからようやく聞けるようになったのは、大会直前のオーストリア合宿中だった。選手たちが「最近は監督からの指示もあります」という言い方をしていたことが、就任当初はそれがなかったことの証明だろう。実際、それまではシステム一つとっても「監督が何を考えているかわからない」、という声しか聞こえてこなかった。といっても不満も聞こえてこなかったから、チームはうまく回り始めていたのだろう。