Fさん、さらにAさんとEさんの体内からは、同じ睡眠導入剤の成分が検出されている。
このような不審死は6件あったが、美由紀はそのうち、AさんとEさんについての2件の強盗殺人、さらに、その他8件の詐欺、1件の住居侵入・窃盗罪で起訴された。
なぜ男たちは美由紀に惚れるのか
彼女には12年12月に鳥取地裁で死刑判決が言い渡され、その後、17年7月に最高裁が上告を棄却したことで、死刑が確定する。しかし23年1月14日、収容されていた広島拘置所で、食べ物を喉に詰まらせて死亡(窒息死)した。享年49歳だった。
なぜかくも多くの男たちが、美由紀に惹かれ、欺かれてきたのだろうか。当時、取材することができた美由紀の元交際相手のXさん(取材時66)は言う。
「美由紀と出会ったのは05年の秋。向こうの勤めていたスナック(「J」)で出会ったんやけど、最初から積極的やったね。俺が肩がこると言ったら、『塗り薬を持ってきたから、うちの車に乗って』と言われ、いきなりラブホテルに連れて行かれたんや。で、『ここで塗るから脱いで』と。女にホテルに連れ込まれたのは初めてやったね。
それから付き合いが始まったんやけど、1カ月もせんうちにカネの無心が始まった。美由紀がずるいのは、子供をダシにすること。向こうの長男が一緒におるときに、あいつは長男に俺のことを『お父さん』と呼ばせるのよ。
それで、子供に『お父さん、一緒に暮らそう』と言わせるわけ。そら、その気になってしまうやろ。一緒になるんやったら、いろいろしてやらなあかんと思って、カネを都合するようになったんよ」
カネの無心の方法
Xさんは美由紀が新居を借りる費用や、医療費などを出したという。
「心臓と腎臓が悪いから、その入院費を出してくれというような感じで、どんどんカネを無心してきたね。たとえばある月なんかは、一緒に住む家を借りたからと言って、そこの水道工事費に15万円、それから畳を替えるのに8万円とか……。