バチバチやりながら、少しずつ答えに近づいていく研究者たち

――一方で、悔しい思いをするようなことも?

田中 それはもう何度もあります。先に論文を出されたときには「同じこと考えてたのに!」と思うし、「こんなアイデアを思いついたのか!」と悔しくなるときもあります。新しい卵化石の論文を見るときは、ちょっとドキッとします(笑)。

 研究者同士でアカデミックに戦っているので、自分たちの研究を否定されたり、批判されたりすることもあるけれど、それをバネにして「より良い、新しい研究をしなきゃ」と思わなければいけない。バチバチやりながら、少しずつ答えに近づいていきます(笑)。

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――論文を出し合う、カードゲームのようですね。

田中 そうですね。例えば、モンゴルに発掘へ行くと、ホテルのロビーで知っている研究者に会うことがあります。世界広しといえど、研究者はみんな同じようなことを考えていますね。

田中康平さん ©︎佐藤亘/文藝春秋

基本的にはみんな“恐竜好き少年”から変わらない

――「この時期にモンゴルに来ているということは……」とお互いに思うわけですね。ちなみに、恐竜好きな方同士ではどんな話題で盛り上がるんですか?

田中 高校生みたいにたわいもない話ばかりしています。でも、やっぱりみなさんプロなので、発掘現場では目つきが変わりますね。やるときはやる、ふざけるときはふざける、という感じで。

 ただ、基本的にはみんな“恐竜好き少年”から変わらないというか。化石を発見したときには、“少年がカブトムシを捕まえた!”くらいの雰囲気で目がキラキラしています(笑)。

――やはり恐竜博士は、みなさん小さな頃から恐竜がお好きなのでしょうか。

田中 そうですね、子どもの頃から好きな方が多いです。「小さい頃の夢を叶えられてすごいですね」とよく言われますけど、周りがみんなそうなので、あまり実感がないんですよ(笑)。