「自分の合わせ方、自分の日本語の使い方、自分の日本文化の取り入れ方が正しい、という意識が働きやすい」
作家のグレゴリー・ケズナジャット氏は、日本在住の英語母語話者コミュニティで使われる「マイジャパン症候群(My Japan Syndrome)」について、こう説明した。『言葉のトランジット』(講談社)を上梓した作家が、文藝春秋PLUSで在留外国人が直面する複雑な心境を語った。
「マイジャパン症候群」とは何か
ケズナジャット氏によれば、マイジャパン症候群とは日本に住む英語母語話者のコミュニティ内で冗談として使われる言葉だという。
「日本に来て日本語を勉強していたり、日本社会に合わせようとしていたりして、自分のやり方・合わせ方こそが正しいと思っている人たちのことを指しています。批判的にいうと、ちょっと日本かぶれに見えてしまっているような人たちに対して使う言葉」と説明する。
その背景には、海外に住むコミュニティ特有の複雑な心理がある。
「みんな自分のプライドを守ろうとしていると思います。言葉が通じず、文化がわからない。それゆえに恥をかくことがある」。こうした状況下で、自分より努力していない人を見れば「この人は努力してない、自分がやはり偉い」と感じ、逆に自分以上に努力している人に対しては「あの人はおかしい、やりすぎている」と判断してしまう。
ケズナジャット氏は、この現象をコロナ禍のマスク着用問題と重ね合わせて説明した。
「コロナ対策で、例えば自分よりマスクをつけない人がいる、あの人はダメ、自分はしっかりマスクをつけているから大丈夫、と思いますよね。逆に、全く外出しないくらい気をつけている人がいたら、いやいや、それはやりすぎとなる」
誰もが自分のレベルを正当化しようとする心理は、マイジャパン症候群と同じ構造だという。

