NHK「未解決事件」シリーズで、大手ハウスメーカー・積水ハウスが55億円を騙し取られた地面師事件が取り上げられる(10月25日放映)。

 

この事件をめぐっては、ノンフィクション作家・森功氏のもとに、主犯格とされるカミンスカス操から13通に及ぶ手紙が届いていた。獄中とのやりとりを森氏が続ける中で、地面師事件の謎が浮かび上がってくる。

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「本当の事が解明されればいいだけです」

 カミンスカス操から3月19日付の手紙が届いた。

〈文藝春秋ありがとうございました。記事読ませて頂きました〉

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 本誌先月号では積水ハウスの海喜館(うみきかん)事件で懲役11年の実刑判決が確定し、東日本の刑務所に収監されている当人との書簡のやり取りを紹介した。昨年4月から交信を始め、これで16通目になる。こう括っていた。

〈本当の事が解明されればいいだけです。(中略)森さんの思ったとおりのことを書いてください〉

55億円の地面師事件の舞台となった「海喜館」 ©時事通信社

 真相に迫るべく、さらに文通を続けた。カミンスカスからの手紙をはじめ、事件の公判資料や積水ハウスの調査報告書などをもとに、順を追って彼らの動きを整理する。なお前号と同じく、書簡は文意を変えない範囲で誤字脱字などを修正した。

 カミンスカスから届いた2通目の書簡には、銀座のアパレル業者「エマイユホールディングス」のオーナー、横澤弘人(仮名)との出会いについて、次のように記されていた。

〈今回の事件(セキスイ)の前に、前年10月頃からエマイユの横澤が本物件を担保に20億円を借入するという流れだった〉(2024年8月8日消印)