何が「柴咲コウらしい」のか、よくわからない
──理子自身に共感するところはありましたか?
柴咲 理子は私にすごく似ていると思います。彼女のなかには自分なりの正解があって、「やりたいからやる」という頑なな一面も持っています。でも周りから「一生懸命やっているね」と思われるのも嫌で、誰にも聞かれていないのに、「私はただ、やりたいからやっているだけ」と言い訳をしてしまう。そんなところも自分に似ているな、と思いながら演じていました。
──柴咲さんは何でもスマートにこなされるイメージがあります。
柴咲 ありがとうございます。でも、みなさんが何を「柴咲コウらしい」と思ってくださっているかは、実は自分ではよくわかっていないんです。
中野監督からも今回、撮影に入る前に「柴咲コウのイメージを崩し、新しい柴咲さんを見せたい」と言われましたが、監督がそもそも「柴咲コウ」にどんなイメージを持ってくださっていたのかがわからないので、何をもって「新しい柴咲コウ」として撮りたいのかがわからない。それを探っていくのは苦労しました。
「どうしようもない」がひとつの答え
──柴咲さんが演じた理子と兄の関係性をどう捉えましたか。
柴咲 正解はないと思うんですけど、でも「どうしようもない」というのが、ひとつの答えになると思います。話し合って理解し合える相手ならとっくの昔に和解していたでしょうし、それができなかったというのは、どうしようもなかったからとしか答えられません。どうにもできなくて問題を先送りにしているうちに、意思疎通も問題の解決もできないまま兄の死を迎えてしまった。ここに「たら・れば」を言っても仕方がないと思います。
ただ、理子本人は苦しかったと思います。もうこの世にいない兄をこれ以上恨んでも憎んでもどうしようもできない。どうあがいても解決できないのであれば、あとはもう自分で補完していくしかないと思います。何事も時間が解決する、というのは、時間が経てば経つほど残された人自身が補完して事実が美化されていくからではないでしょうか。それが生きていくということだし、それでいいと思っています。
──柴咲さんはご自分とご家族との間で問題が生じた場合、どのように解決してこられたのですか?
柴咲 私はトライアンドエラーです。自分が言いたいことを言ったせいで、家族がより頑なになって、あまり私に相談ごとをしてくれなくなったという失敗があって、その時に、自分の主張を通せばすっきりするというものでもないんだな、と学びました。


