男性用成人玩具の「TENGA」、女性用成人玩具の「iroha」などの製造販売で知られている株式会社TENGA。6月下旬にこんなツイートが話題になりました。

 

〈最近『TENGAの広報なんてやってるスケベ女ぐう抜ける』的なコメントが私にも寄せられるようになって驚いてるけど、こちとらそういう『エロい女には何してもいい』ってクソ思考を撲滅するためにこの仕事してるからな〉

 

 ツイートしたのは、株式会社TENGAで広報を担当する西野芙美さん。アダルト業界で働く女性が、どのようなことを目指して仕事をしているのか……やはり気になります。そこで西野さんと、同じく同社で広報を担当されている工藤まおりさんに「どうしてTENGAで働いているのか」を聞いてみました。

左から工藤まおりさん、西野芙美さん

―― 本日はよろしくおねがいします。まず、TENGAで広報のお仕事をされるようになった経緯を教えてください。

西野芙美さん

西野 大学時代にジェンダーやセクシュアリティの勉強をしていて、当時から性についてのタブー意識に興味がありました。茶化したり、笑いをとる文脈で性について語られることは多いですが、真面目に性の話ができる環境はあまりない。そのために、性についての悩みを一人で抱え込んでしまう人を周囲で見てきていたんです。

 その後、出版社に就職して、ろくでなし子さんの『私の体がワイセツ!? ーー女のそこだけなぜタブー』や坂爪真吾さんの『男子の貞操 ーー僕らの性は、僕らが語る』等、さまざまな書籍の宣伝に携わったのですが、本を通じて情報を伝えられるのは、どうしても年齢層の高い人に限られてしまう面がある。若い人に向けても性に関する発信をしたいと考え、「性を表通りに」をコンセプトに掲げるTENGAに転職しました。社員は83名で、男女比は6:4くらいの会社です(2018年6月現在) 。

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工藤 私も性へのタブー意識がきっかけです。小さい頃、自分の女性器に触れると母親に怒られていたのですが、なぜいけないことなのかはわからず、漠然とした罪悪感だけ持っていたんです。

 大人になって調べてみると、みんなやっているし、別にマイナス面がある行為でもない。疑問に思っていた性へのタブー意識を、TENGAという会社で変えていけたらおもしろいかなと思って入社を決めました。

2万回以上リツイートされた投稿の真意

―― 西野さんは、先日ツイートがバズりましたね。

西野 今年の6月に、NHKで高齢者の性についての弊社の取り組みを取り上げていただいたんですが、放送後「TENGAの広報なんてやってる女は、その境遇だけで抜けるわ」っていうようなメッセージが届きまして。

工藤まおりさん

「性的な話をする女」イコール「誰とでもセックスをする」「俺でもいけそう」という考えは、まったく根拠のない誤解です。「性についてもっとオープンに話せる環境を作ろう」「性についての誤解を排し、誰もが楽しめるものにしていこう」という意識でTENGAは事業展開しているので、その気持ちをつぶやきました。

 もちろん「内に秘めるからこそ官能的」という考え方もあるし、みんながオープンにするべきとは思わないのですが、まずは話せる土壌を作った上で、各々の嗜好を楽しめればいいのかなと。

―― 共感された方がかなり多かったから、あれだけリツイートされて、いいねもついたのだと思います。

西野 だといいんですけどね。いただいたお声を見ると、本当はもっと性の悩みについて話したいけれども、性的な話をすることへの偏見から、声に出せないという方は結構いらっしゃるのかなという印象でした。