「泣いた」「心臓が痛い」アクションとロマンスが高評価
そもそも、秋夕シーズンは家族連れの観客が多く、誰もが楽しめる大衆的な映画がヒットする傾向があった。そんな中、「オタク文化」と見なされがちだった日本アニメがこれほど善戦している理由について、ソン・ジサン氏(大衆文化評論家)は次のように分析する。
「まずは、大型スクリーンを圧倒するアクションシーンが大好評です。近年の日本アニメは制作環境がデジタル化したことで、躍動感のある激しいアクション演出が可能になりました。ゲームに慣れ親しんだ韓国の若者層には、まるでゲームの中に入り込んだかのような『臨場感』を与えています。
主人公たちの成長物語も、韓国の若い観客から共感を得ています。すでに配信サービスを通じて韓国のファンにもおなじみとなった主人公たちが、さまざまな問題を抱えて葛藤する姿に、感受性の高い若者たちが共感しているのです」
映画では主人公のデンジと、同年代の少女・レゼが出会い、アクションシーンだけでなく初恋のようなロマンスも描かれる。これも、大きな反響を集めた。韓国最大の映画サイト「NAVER映画」に掲載された一般観客のレビューを見ると、ロマンスに関するコメントが最も多い。
「少年と少女の爆発的な出会い」
「狛治さん(『鬼滅の刃』の登場人物・猗窩座の人間だった頃の名前)でも俺を泣かせられなかったのに、レゼが俺を泣かせた」
「心臓がこんなに痛いのはいつぶりだろう……」
「ずっと前に忘れてしまった初恋の純粋さを思い出す」
「アクションは観客を劇場に呼び、ロマンスは観客をリピーターにする」
韓国でも絶大な人気…米津玄師目当ての観客も
韓国でも高い人気を誇る米津玄師の主題歌も人気の要因として欠かせない。『Lemon』『KICK BACK』『地球儀』など、数々のドラマやアニメの主題歌を手掛け、韓国でも熱烈なファンを持つ米津玄師は、今年3月、初めての韓国公演を行ったが、2日間のコンサートチケットは瞬く間に完売。その人気を証明した。
「映画を見終わった直後は何も感じなかったのに、一日経って主題歌を聴くたびに後遺症がひどすぎて日常生活が送れない」
「米津玄師は悪魔と契約したに違いない」
「主題歌があまりにも気になって見に行ったけど、アクションもすごいし、全体的に面白かった」
「アクションと主題歌、マジでヤバい!」
米津玄師が手がけた『劇場版チェンソーマン レゼ篇』の主題歌『IRIS OUT』は、10月第2週からSpotify Korea、Apple Music Korea、YouTube Music South Koreaで一斉にストリーミング順位1位を占めている。韓国最大のストリーミングサイト「Melon」のTOP100でも4位に入り、imaseの『NIGHT DANCER』が持っていた歴代J-POP最高順位の17位を更新した。米津玄師の歌手としての人気と、アニメの大ヒットが相乗効果を発揮しているのだろう。

