映画『チェンソーマン レゼ篇』が、公開1ヵ月で観客動員数426万人、興行収入65億円を突破した。全国映画動員ランキングで5週連続1位となったが、同作は日本だけでなく韓国でも“異例のヒット”となっている。ジャーナリストの金敬哲氏が寄稿した。
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「韓国映画界の興行に、突然変異が起きている!」
今秋、韓国の若者から「キ・ジュ・トップ(鬼・呪・鋸)」の愛称で呼ばれる『鬼滅の刃』『チェンソーマン』『呪術廻転』の劇場版が韓国の映画館を占領した。この現象に対し、韓国映画界に緊張が走っている。日本アニメの2025年現在の劇場シェアは14.4%。2023年には『THE FIRST SLAM DUNK』と『すずめの戸締まり』の同時ヒットで14.1%を記録したが、それよりさらに激しい勢いを見せているのだ。
韓国で最大の祝日である秋夕(=チュソク。旧暦のお盆)は、昨今低調な映画館にも、久しぶりに活気が戻ってくる時期だ。今年の秋夕は、巨匠パク・チャヌク監督の『どうしようもない』と、ヤクザ組織の次期ボスの座を巡るアクションコメディの『ボス』という2本の韓国映画の対決が予想されていた。
韓国の大作が並ぶ中、日本アニメがトップに
ところが、いざふたを開けてみると、日本アニメの人気がすさまじかった。特に連休終盤には『劇場版チェンソーマン レゼ篇』が「まさか」の興行トップに躍り出た。誰もが思いもよらなかった波乱の展開だった。
『チェンソーマン』はNetflixなどの配信サービスを通じて、韓国でもおなじみの作品となった。その劇場版である『劇場版チェンソーマン レゼ篇』は9月24日、『どうしようもない』と同日に公開された。公開当初の観客動員数や話題性は『どうしようもない』に押されていたが、秋夕が始まる10月第1週から『どうしようもない』を抜いて興行2位に浮上。そして連休最後の週末である10月11日からは『ボス』までも引き離し、ついに興行トップに立った。
観客動員“300万人超え”はほぼ確実
以後は1位を独走しながら、10月24日までの累計観客動員数は233万人で、『劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編』の記録(222万人)を抑え、日本アニメの歴代興行記録の8位に躍り出た。ネットを中心に口コミが爆発的に広がり、300万人突破はほぼ確実。『ハウルの動く城』の301万人(7位)、『君の名は。』の396万人(6位)を超えられるかに注目が集まっている。
万人受けの『鬼滅』、『チェンソーマン』は若者男性から支持
『劇場版チェンソーマン レゼ篇』の人気を牽引しているのは10~20代の男性客だ。韓国最大のマルチプレックス映画館グループCGVが集計した観客分布図によると、年齢別では20代が48%で最も多く、次いで10代(21%)、30代(15%)の順となっている。性別では男性が6割、女性が4割程度で、男性が女性を上回る。
同じく韓国の劇場で大ヒットしている日本アニメ『劇場版「鬼滅の刃」 無限城編』は、男性(53%)と女性(47%)で性別の差はほとんどなく、年齢層も20代(40%)、30代(26%)、40代(18%)が中心だ。『鬼滅の刃』が万人向けだとすれば、『チェンソーマン』は若い男性客が中心となっているようだ。


