10月16日に韓国公開された『劇場版 呪術廻戦 懐玉・玉折』も、上位にランクインし、23日までに15万人を動員している。前作『劇場版 呪術廻戦 0』(2022年)は韓国内で計73万人の観客を動員したが、今回は、昨今の日本アニメブームの相乗効果で「100万人動員は当たり前」という雰囲気となっている。
「旭日旗に似ている」炭治郎の耳飾りが物議、イベントが急遽中止に…
秋夕の日本アニメ映画ヒットを勢いづけたのは、8月に韓国公開された『劇場版「鬼滅の刃」 無限城編』だった。ただ、『鬼滅の刃』をめぐっては、1作目の劇場版『無限列車編』(2021年)の公開時から、主人公・炭治郎の旭日旗に似た耳飾りの模様や、作品で描かれている大正時代が、韓国にとっては日本により植民地支配されていた時期と重なることから、「日本帝国主義を連想させる」「右翼アニメだ」などと論争が起きた。韓国の『鬼滅』ファンが一部から「売国奴」と非難されることすらあったこの問題は、今年も同様に物議を醸していた。
8月9日、炭治郎とその妹・禰豆子がソウルの蚕室球場で開催される始球式イベントに登場する予定だったが、急遽中止に。「(日本の統治からの独立記念日である)光復節(=8月15日)を控えたタイミングでやることではない」との批判の声が殺到した影響とみられる。
だが、むしろこれが広報効果につながった側面もある。8月22日の公開以来、10月23日までに548万人の観客を動員。このまま動員数を伸ばし続ければ、今年公開された韓国映画の最高動員記録である『ゾンビ娘』の562万人を破ることも可能だという見通しも出ている。
コロナで韓国映画の新作が激減
韓国で日本アニメ映画がヒットしている背景には、コロナ禍以降続く韓国映画の低迷がある。今年公開される韓国の商業映画(製作費30億ウォン以上の映画)は20本程度で、年に40本以上が公開されていたコロナ以前に比べると半分に過ぎない。新作の上映が絶対的に不足している韓国の映画館では、ヒット作の再上映や人気ミュージシャンのコンサート映画、そして日本のアニメ映画などで活路を模索している。
特に日本アニメは熱心なコアファンが何度も繰り返し鑑賞する(n次観覧)のが通例であるため、「少なくとも損はしない」というのが業界の定説だ。
メジャー級の配給会社が日本アニメを扱うように
上記の3本の日本アニメの配給会社が、それぞれCJ ENM(『鬼滅の刃』)、ソニー・ピクチャーズ(『チェンソーマン』)、MEGABOX中央(『呪術廻戦』)といった、いわゆるメジャー配給会社である点もポイントだ。
以前は、世界的に人気のある宮崎駿監督や新海誠監督の作品を除き、日本のテレビアニメの劇場版は中小規模のアニメ専門配給会社が扱っていた。しかし今や、韓国映画の新作が不足していることから、メジャー級の配給会社も続々とこの競争に参入しているのだ。ネットワークや広報能力などが中小配給会社とは比較にならないため、興行の可能性もはるかに高くなるということだ。

