「若者の好みが完全に違う」「制御しなければならない」
映画評論家のオ・ドンジン氏は署名コラムで、日本アニメブームが席巻する韓国映画界について、こう警告している。
「劇場街に“突然変異興行”が相次いでいる。例えば『劇場版チェーンソーマン レゼ篇』というアニメがある。主人公の頭からチェーンソーが飛び出すらしく、それで主人公が『チェーンソーマン』という名前を得ることになるという。このようなファンタジーに韓国の若い観客が現在230万人も集まっているということだ。これは見る映画がないからではなく、若い観客の好みが、これまでの世代と完全に違う方向へと軌道が外れたケースだ。アニメーションに出演した見慣れない声優たちの来韓イベントにも、若年層が集まるほどだ。
もし劇場が日本のアニメとイム・ヨンウン(筆者注:韓国の演歌歌謡歌手)のコンサートの生中継、プロ野球中継などで満たされるならば、韓国の劇場街は(これまでと)完全に違う区域に、突然変異した空間に変貌する可能性が高い。これは多分に制御しなければならない信号だ」(『京畿新聞』10月24日コラム 「劇場版チェーンソーマン レゼ篇」が1位だって?」)
かつては「オタク文化」とみなされていたが…
日本アニメが韓国の映画館を席巻している背景に、配信サービスの存在は欠かせない。かつて韓国では「オタク文化」とみなされ、大衆的な人気とは程遠かった日本アニメが、配信によって手軽に視聴できるようになったことで、大衆化した側面があるからだ。韓国でもNetflixなどの配信サービスで日本アニメに接する機会が増えたことで、テレビシリーズの世界観をさらに楽しみたいと映画館に足を運ぶ人が増えたと考えられる。
日本アニメは、韓国の20代・30代が日本文化に接する最も重要な窓口になっている。マッチングアプリを運営するENIZE社が日韓の20代・30代の男女1万人を対象に実施したアンケート調査によると、韓国人女性の48%、男性の38%が「漫画やアニメを通じて日本文化に触れる」と回答した。日本の若者がK-POPや韓国ドラマを見て韓国に憧れを抱くように、韓国の若者はアニメから日本文化の魅力を感じているのだろう。
日本アニメは今や、世界的なキラーコンテンツとして脚光を浴びている。Netflixは今年7月、米ロサンゼルスで開かれた「Anime Expo」で、「加入者の50%以上にあたる3億人がアニメを視聴している」と明らかにした。これは5年前に比べると約3倍に増加した数値だ。アニメ専門の配信サービスである「Laftel」は、韓国発のプラットフォームとして唯一黒字を記録しているが、その親会社である「ANIPLUS」は、日本の新作テレビアニメの7~8割の韓国内流通網と版権を保有する企業だ。
韓国の劇場を席巻する日本アニメブーム。これはかつての「オタク文化」から脱皮し、いまやクールな大衆文化へと変貌しつつある日本アニメの、世界的な立ち位置を物語っているのかもしれない。

