キースの愛が止まらない

 ブライアンについては本連載の初期、映画『Rolling Stone ブライアン・ジョーンズの生と死』でご紹介したことがある。もともとバンドを結成したリーダーだったのに、オリジナル曲を作れないことで次第に薬物と酒におぼれ幻覚に襲われる。アニタに暴力を振るうようになり、アニタも負けずに殴り返す。すさんだ状況でキースがアニタの理解者になった。

©Brown Bag Productions,LLC

「自分の思いをはっきり悟った。アニタへの愛が止まらなかった。彼女は従うことを嫌い、自由を求めていた」

 アニタはキースと2人でモロッコへと旅立ち、そこで結ばれる。

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「アニタは俺に何を見出したのか。どうやら彼女も俺に謎と魅力を感じてくれたらしい。幸運なことだ」

ところがミック・ジャガーとも

 ところが事はすんなりとは進まない。アニタは映画俳優としても活躍するようになっていた。そこに、ストーンズのボーカル、ミック・ジャガーとの共演の話が舞い込んだ(映画『パフォーマンス/青春の罠』1970)。

「ミックは恋愛対象じゃなかった。でも8日間、同じベッドで笑い合い、2分の撮影のためにクスリをやれば何が起きる?」

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 傷心のキースが書いたのが『ギミー・シェルター』だ。「嵐が近づいてくる。俺の命を脅かす。シェルターを探さなきゃ」という歌詞が心境を表しているのだろう。それでも最終的には、アニタはキースとよりを戻す。キース、ミック、ミックの彼女だったマリアンヌ・フェイスフルと4人でしこりを残さないための船旅に出る。ここでキースはアニタから妊娠していると告げられる。

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「うれしかったが同時に全てが変わる気もした。本気かと聞くとアニタは“もちろん。子供を持つなら父親はあなたがいい”と。それで腹を決めた」

 アニタは出産を前にハードドラッグをやめるため、モルヒネを使うようになる。『シスター・モーフィン』という曲はそんなアニタをモデルにしたという。